ABSTRACT 486(9-2)
膀胱癌の発癌・増殖におけるメタロチオネインの役割:近藤幸尋1,遠藤和香子2,姫野誠一郎2,木村剛1,秋元成太1,井村伸正2(1日本医大・泌,2北里大・薬)
Role of metallothionein on bladder carcinogenesis and tumor progression: Yukihiro KONDO1, Wakako ENDO2, Seiichiro HIMENO2, Go KIMURA1, Masao AKIMOTO1, Nobumasa IMURA2 (1Dept. of Urology, Nippon Med. Sch., 2Sch. of Pharm.Sci. Kitasato Univ. )
【目的】メタロチオネイン(MT)は重金属と結合性を有する低分子蛋白質である。その生理的役割については必須微量金属の恒常性の維持、有害性重金属の毒性軽減、フリーラジカル除去の他、細胞の増殖調節への関与などが報告されている。我々は、MTノックアウト(MTKO)マウスを用いてMT遺伝子の化学物質による発癌および腫瘍増殖に対する影響を検討した。【方法】MTKOマウスおよび対照となる129/SVマウスに膀胱癌誘発物質であるN-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN)を0.05%の濃度で8週間摂取させ、投与中止後12週後に解剖し膀胱癌を病理組織学的に検討した。【結果と考察】BBN摂取により対照群である129/SVマウスでは発癌率が42.9%であったのに対して、MTKOマウスでは72.9%であり、MTKOマウスは129/SVマウスに比して1.7倍高い発癌率を示した。病理組織学検討においてはMTKOマウス由来の膀胱癌は高分化型移行上皮癌を呈したのに対して、129/SVマウス由来の膀胱癌は低分化型移行上皮癌であり筋層浸潤も認めた。以上より膀胱正常組織においてMTは癌化抑制因子として、腫瘍中では増殖浸潤因子となりうることが示唆された。