ABSTRACT 488(9-2)
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ヒト乳癌におけるエストロゲンレセプター遺伝子発現の制御機序:林 慎一, 谷本圭司, 江口英孝, 吉田 崇, 中西京子, 中地 敬(埼玉がんセ・研, 広島大・歯)

Molecular mechanisms of expression of estrogen receptor gene in human breast cancer: Shin-ichi HAYASHI, Keiji TANIMOTO, Hidetaka EGUCHI, Takashi YOSHIDA, Kyoko NAKANISHI, Kei NAKACHI (Saitama Cancer Center Res. Inst., Hiroshima Univ. Sch. of Dentistry)

エストロゲンレセプター(ER)は乳癌の発生・進展に、特に初期の段階で深く関与している。多くのER陽性乳癌組織においてERは過剰発現しており、何らかの癌特異的発現制御機構の存在が考えられる。従ってその制御機構は乳癌発生のメカニズムの解明、早期診断、予防にも大変重要である。
ER遺伝子には複数の第1エキソンがあり、ヒト乳腺組織では2つの異なったプロモーター(プロモーターA、B)から転写される。我々はすでにER陽性癌組織では、プロモーターBからの転写が特異的に著しく亢進していることを見出し報告した。今回、その機序を明らかにするため、ER遺伝子プロモーターB領域の解析を行い、正、または負に作用する複数のシスエレメントの存在を確認した。中でも、転写開始点下流にプロモーターBからの発現に必須であるエンハンサーエレメントとその新規結合タンパク(Estrogen Receptor promoter B associated Factor-1)の存在を明らかにした。また種々の細胞核抽出液を用いたゲルシフト法の解析結果から、ERBF-1はER陽性細胞にのみ見出された。これらの結果から、このエンハンサーエレメントとERBF-1はER陽性乳癌におけるERの高発現に重要な決定因子であると考える。