ABSTRACT 489(9-2)
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アロマターゼ阻害剤によるエストロゲン合成酵素(アロマターゼ)の副次的増加機構:原田信広(藤田学園・総医研)

Secondary increase of estrogen synthetase (aromatase) by aromatase inhibitors : Nobuhiro HARADA (Inst. for Comprehensive Med. Sci., Fujita Health Univ.)

[目的] 最近、乳癌などのエストロゲン依存性癌に対する内分泌療法としてアロマターゼ阻害剤が多く使われるようになってきた。アロマターゼ阻害剤はエストロゲン産生を抑えることにより癌細胞の増殖を抑制するが、エストロゲンの減少は同時に骨粗鬆症や動脈硬化症の危険因子となるので、その用量や投与期間などの正確な情報が欠かせないと思われる。そこで腫瘍細胞を使用してアロマターゼ阻害剤のアロマターゼの合成・分解への影響を調べてみた。
[結果、考察] 非ステロイド性アロマターゼ阻害剤は腫瘍細胞内のアロマターゼ蛋白質の存在量を増加させたが、こうした効果はステロイド性アロマターゼ阻害剤には見られなかった。この時、アロマターゼmRNAのレベルには有意な影響が見られないことから、この増加は転写後のアロマターゼmRNAあるいは蛋白質の安定化が原因と思われる。このアロマターゼ阻害剤の効果は蛋白質合成阻害剤であるサイクロヘキシミド存在下でも確認できることから、アロマターゼ蛋白質・阻害剤の強固な複合体形成による蛋白質分解(代謝回転)に対する安定化が原因であると結論した。またステロイド性アロマターゼ阻害剤でこうした安定化効果が見られないのは非ステロイド性阻害剤に比べ、その親和性(Ki-valueが100倍以上高い)が低いのが原因と思われる。