ABSTRACT 491(9-2)
ヒト子宮内膜癌培養細胞株における17β-hydroxysteroid dehydrogenaseの発現:鈴木貴、笹野公伸、名倉宏 (東北大・医・病理)
Expression of 17β-hydroxysteroid dehydrogenase in human endometrial cancer cell lines: Takashi SUZUKI, Hironobu SASANO, Hiroshi NAGURA (Dept. of Pathology,Tohoku Univ. Sch. of Med.)
[目的] estrogenが子宮内膜癌の増殖に関して重要な役割を担っていることはよく知られている。17β-hydroxy-steroid dehydrogenase (17β-HSD) は、type 1がestrogenを活性化、type 2がestrogenを不活化する作用を各々有しており、組織中のestrogen活性を直接的に調節する重要な酵素である。そこで今回我々は、種々の子宮内膜癌細胞株における17β-HSD の発現を検討した。[方法] 5種類の子宮内膜癌細胞株(RL95-2、HEC-1A、HEC-1B、KLE、Ishikawa)に対して、thin-layer chromatography により17β-HSD活性 (pmol/min/mg protein) を測定した。またnorthern analysisにより、17β-HSDのmRNAの発現を検索し、イメージ解析装置でそのレベルを定量化した。[結果] 17β-HSD type1 活性は検索したどの細胞株でも非常に低値 (0.10 - 0.58) であったが、type2 活性はRL95-2で非常に高値 (96.1)、HEC-1Aで高値 (1.78)、他で非常に低値 (0.12 - 0.16) と大きなバリエーションが認められた。17β-HSD type1のmRNAの発現はいずれの細胞株でも見られなかった。17β-HSD type 2 mRNAの発現はRL95-2とHEC-1Aでのみ認めたが、前者は後者より100倍高い発現量を示した。更にRL95-2における17β-HSD type 2 mRNAレベルは、retinoic acidによって時間及び濃度依存性に増加を認めた。[考察] ヒト子宮内膜癌細胞株では、バリエーションがあるものの17β-HSD type 2が主に発現しており、またretinoic acidがその調節因子として作用している可能性が示唆された。