ABSTRACT 503(9-3)
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骨形成蛋白質(BMP-2)による前立腺がんの増殖制御:井手久満1,2,松本伸行1,青木一教1,長田幸夫2,杉村隆1,寺田雅昭1,吉田輝彦11国立がんセ研・分子腫瘍、2宮崎医大・泌)

Growth regulation of human prostate cancer cells by bone morphogenetic protein-2: Hisamitsu IDE1,2,Nobuyuki Matsumoto1, Kazunori AOKI1, Yukio OSADA2, Takashi SUGIMURA1, Masaaki TERADA1, Teruhiko YOSHIDA1(1 Genetics Div., Natl. Cancer Center Res. Inst.,2Dept. of Urol., Miyazaki. Med. Col.)

 骨形成蛋白質 (bone morphogenetic protein: BMP) は、骨形成の強力な誘導因子のみならず、様々な細胞の分化、増殖に重要な役割を担っている。一方、前立腺がんは高率に骨転移を来たし、その多くが特徴的な骨硬化像を示す。前回我々は、ヒトBMP受容体IB型の遺伝子(BMPR1B)のcDNA全長を分離・同定し、BMPR1Bの発現が特徴的に前立腺で高いこと、また、正常前立腺組織と比較して前立腺がん細胞株、抗アンドロゲン療法を施行された患者の前立腺がん組織及び前立腺非がん部において著明に発現が低下していることを報告した。今回、我々は前立腺がん細胞の増殖に対するrhBMP-2の作用について検討した。アンドロゲン依存性前立腺がん細胞株LNCaPにおいて、rhBMP-2はアンドロゲン存在下では増殖抑制作用を、アンドロゲン非存在下では増殖促進作用を示した。アンドロゲンによる各BMPR遺伝子のmRNA発現の制御を解析したところ、濃度依存的にBMPR1Bのみ発現の上昇を認めた。リガンドであるBMP-2の発現には変化がなかった。以上の結果より、BMPR1Bはアンドロゲンにより発現調節を受けているが、BMPR1A、BMPR2は発現調節を受けていないこと、アンドロゲンの存在の有無によりBMP-2はLNCaP細胞に対して異なる増殖効果を有することが示された。BMP-2の増殖効果の違いから、BMPR1A、BMPR1Bが少なくとも前立腺細胞においてそれぞれ増殖促進、抑制と、相反する増殖制御信号を伝達する可能性が考えられた。