ABSTRACT 507(9-4)
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FGFシグナル伝達機構の解析:幸原 晴彦1,Yaron R.HADARI2,Irit LAX2,Joseph SCHLESSINGER2 (1阪大・医・三内, 2NYU Med.Ctr.)

Analysis of FGF signal transduction: Haruhiko KOUHARA1,Yaron R.HADARI2,Irit LAX2, Joseph SCHLESSINGER2 (1Med3,Osaka Univ. Med. Sch., 2NYU Med.Ctr.)

FGFR1の燐酸化シグナル伝達物質としてはPLCgamma1,Shc,FRS2,Shp2の4つが知られている。このうちFGFシグナルに特異的なFRS2は90kDの燐酸化蛋白としてクローニングされた。その構造はN末にある膜局在化に必要なmyristylation signal,PTB domain, さらにGrb2結合部位及びShp2結合部位よりなる。myristylation signalはFRS2の膜局在化に必須であり、これを欠失させるとFRS2は燐酸化されず、rasを介したMAPK活性化能は消失した。FGFR1からのMAPK活性促進シグナルはFRS2発現量とともに増強し、dominant negative rasによってブロックされることよりFRS2はレセプターとrasをつなぐリンカー蛋白であることがわかった。FRS2上には4つのGrb2結合部位(Y196, Y306, Y349, Y392)が存在する。この4つのチロシン基をフェニルアラニン基に変えるとwild typeに比較してMAPK持続活性促進作用がやや減弱したがPC12細胞分化促進作用は変化なかった。これに反しShp2結合部位(Y436)を変異させるとMAPK持続活性促進作用はコントロールと同程度まで減弱しPC12細胞分化促進作用も消失した。Shp2はFGFR1により燐酸化されShp2上にGrb2/Sosが結合する。さらにShp2はN末SH2ドメインを介しFGFR1によって燐酸化されたFRS2-Y436に結合する。フォスファターゼ活性を消失させたShp2(Cys/Ser)を発現させてもMAPK持続活性促進作用がみられないことから、MAPK 活性化にはGrb2/SosのShp2-FRS2を介した膜移行と,Shp2のフォスファターゼ活性が必要であることが示唆された。