ABSTRACT 509(9-4)
basic FGF antagonistによるヒトグリオーマ細胞株の増殖抑制とアポトーシスの誘導 : 河野勝彦1、高橋潤2、上羽哲也2、森久恵2、5、橋本信夫2、妙本陽3、轟雅樹3、日合弘4、福本学5(1済生会野江・脳外、2京大・脳外、3京大・農・応用生物科学、4京大・医・病態生物医学、5東北大・医・加齢研・病態臓器構築)
In vitro suppression of cell growth and induction of apoptosis in human glioma cells by a basic FGF antagonist : Katsuhiko KONO1, Jun A TAKAHASHI2, Tetsuya UEBA2, Hisae MORI2,5, Nobuo HASHIMOTO2, Akira MYOUMOTO3, Masaki TODOROKI3, Hiroshi HIAI4, Manabu FUKUMOTO5 (1Dept. of Neuro. Surg. Saiseikai-Noe Hosp., and 2Kyoto Univ., 3Unit. of Anatomy and Cell Biol. Dept. of Animal Science, and 4Detp. of Pathol. Kyoto Univ., 5Inst. of D.A.C. Tohoku Univ.)
【目的】basic FGF(bFGF)はhigh grade gliomaにしばしば過剰発現しており、bFGFを介したautocrine機構がgliomaの腫瘍化・悪性化の一要因であると考えられている。今回我々はbFGFのreceptor competitive antagonistをヒトglioma細胞に作用させて(1)増殖抑制がみられるかどうか、(2)アポトーシスを誘導するかどうか、(3)antagonistと抗癌剤との併用で効果の増強がみられるか、の三点について検討した。
【材料・方法】bFGF antagonistは16アミノ酸蛋白のMWYRPDERKQQKREを用いた。抗癌剤はCDDP,VP16,ACNUを使用した。glioma細胞株はT98G, U251MG, U87MGを、bFGF非依存性株 としてA431 を用いた。各細胞株に antagonistを作用させて72時間培養後、MTTアッセイを行った。形態変化はU251MGにantagonistを作用させて、acridine orangeとHoechst33258を用いて蛍光顕微鏡で観察した。apotosisが誘導された場合はカスパーゼ阻害剤を作用させて、アポトーシスが抑制されるかどうか検討した。抗癌剤はID50-30%濃度でantagonistと併用し、72時間培養後の増殖率をMTT アッセイで比較した。
【結果】いずれのglioma株においても antagonistによる増殖抑制が認められた。antagonist 作用後の形態観察では、アポトーシスが認められた。カスパーゼ阻害剤を作用させると、 antagonistの増殖抑制効果は消失した。抗癌剤とantagonistとの併用では、controlとの併用群に比べそれぞれ22-29%の効果増強があった。
【考察・結論】glioma細胞におけるbFGFの作用機序はintracrine, autocrine など種々の系が唱えられており未だ結論を得ないが、今回の実験によりglioma 細胞の増殖にはbFGF receporを介したautocrine loop機構が作用している可能性が示唆された。また、antagonist が アポトーシスを誘導したことから、glioma細胞で過剰発現したbFGFがアポトーシスによる細胞死を抑制していることも、細胞の腫瘍化の一因と考えられた。antagonistと抗癌剤との併用で殺細胞効果の増強が認められたことから、将来的にはchemotherapyのadjunctとして期待できる。