ABSTRACT 513(9-4)
JAK活性化機構と下流シグナル伝達経路についての解析: 水口留美子,畠山昌則(癌研・研・ウイルス腫瘍部)
Analysis of the mechanism of activation and downstream signal transduction pathway of JAKs: Rumiko MIZUGUCHI, Masanori HATAKEYAMA (Dept. Viral Oncology, Cancer Institute)
我々は、細胞増殖におけるJAKの役割を明らかにすることを目的として、各JAKをマウス血球系細胞で一過性に過剰発現させたところ、その一つであるTyk2の発現によってc-fos、c-myc、cyclin D3 などG0/G1期進行に関わる遺伝子群のプロモーター活性が顕著に誘導されることを見い出した。そこで、Tyk2をモデルとしてJAKの活性化機構の詳細を検討した。その結果、N末端にSrcの膜移行シグナルを導入することによりTyk2を人為的に細胞膜に局在させ、さらにchemicaldimerizerであるcoumermycin(CM)を用いて同分子を強制的に二量体化させることにより、Tyk2依存性プロモーターの誘導活性が相乗的に上昇することがわかった。このTyk2改変分子を、IL-2/IL-3依存性マウスリンパ系細胞に安定的に導入したところ、この細胞はCM存在下で増殖因子非依存的細胞増殖能を獲得した。また、この細胞にさらにドミナントネガティブ型Rasを過剰発現させたところ、サイトカイン依存的な増殖にはほとんど影響が見られなかったのに対して、CM存在下でのTyk2依存的な増殖は完全に阻害されることがわかった。以上の結果から、細胞膜への局在化と二量体化がJAKの活性化に重要であること、ならびにJAKの活性化のみで増殖に必要なシグナルが伝達されうることが結論づけられた。また、Tyk2の下流で増殖シグナルを伝達する因子としてRasが存在することが明らかとなった。