一般演題

一覧　トップ

ホルモン依存性および非依存性乳癌における術後予後の遺伝子診断：松本智司^1・2,恩田昌彦²,吉本賢隆³,霞 富士雄³,中村祐輔⁴,江見 充¹(¹日本医大・老人研・分子生物,²日本医大・一外,³癌研・病・外,⁴東大・ヒトゲノム）

Genetic diagnosis of post-operative prognosis in hormone-dependant or -independent breast cancer: Satoshi MATSUMOTO¹, Masahiko ONDA², Fujio KASUMI³, Masataka YOSHIMOTO³, Yusuke NAKAMURA⁴, Mitsuru EMI¹, (¹Dept. Mol. Biol., Inst. Gerontol., Nippon Med. Sch., ²1st. Dept. Surg., Nippon Med. Sch., ³Dept. Surg., Cancer Inst. Hosp., ⁴Labo. Mol. Med., Inst. Med. Sci., Univ. Tokyo)

背景：乳癌の診療，特に内分泌療法の選択に際し，エストロゲンおよびプロゲステロンレセプター(ER，PgR)の有無による分類は重要であり，このホルモン依存性の有無によって区別される乳癌の各群では，その発生・進展・再発の分子機構も各々異なるものと考えられる．目的：ERおよびPgRの有無によって乳癌を分類し，各群における癌組織での種々の染色体欠失(LOH)を検索して術後予後との相関を調べることで，予後診断の指標となりうるかを検討した．対象・方法：癌研病院にて乳癌根治手術を施行し，5年以上の予後調査を行った200症例を対象に，ER・PgRの有無で群分けして，乳癌で高頻度なLOHが認められる染色体領域，計18ヶ所におけるLOHの有無と術後予後との関連をKaplan-Meier法およびLog-rank検定法により検討した．結果：ERおよびPgRの有無で5生率に差は認められなかったが，各群では，特定の染色体領域のLOH症例において有意に累積生存率の低下が認められたので列挙する．(1)ER陽性群：17q21.1 (2)ER陰性群：TP53および22q13 (3)PgR陽性群：1p34，1p22，13q12，17p13.3および17q21.1 (4)PgR陰性群：11p15，13q12，17p13.3および22q13．考察：ホルモン依存性および非依存性乳癌の各群において，その予後に関わる遺伝的変化が各々異なっており，各群における乳癌の進展・再発が遺伝学的に別の経路を経ると考えられ，この事に基づいた予後診断の必要性が示唆された．