一般演題 0536(11)
脳転移先行型転移性脳腫瘍の臨床病理学的検討:欅 篤(天理よろづ相談所病院・脳外)
Clinicopathological study of brain metastasis as an initial manifestation: Atsushi KEYAKI (Dept. of Neurosurgery, Tenri Hosp.)
今回、1990年から97年までの間当科で経験した転移性脳腫瘍手術例65症例のうち、脳転移症状で発症した脳転移先行型につき臨床病理学的に検討を加え報告する。症例は16例で、男性10例、女性6例、平均年齢60歳で、原発巣としては肺癌が最も多く14例を占めた。初発症状としては麻痺等の巣症状10例、頭痛4例、痙攣発作1例、めまいが1例でみられた。発症時、原発巣と脳以外の他臓器転移巣は5例でみられ、転移巣の個数は3個以上の多発病巣が多いという特徴があり、組織型では腺癌が圧倒的に多かった。治療としては、摘出術後放射線治療が15例に、化学療法が8例で行われた。症例数の多い肺癌に限れば、全経過は平均17.6ヶ月で、経過中に脳転移してきた肺癌群の平均生存期間22.8ヶ月に比して短いも有意差はなかった。また、40%近くの症例が脳脊髄転移巣の進展増悪が直接死因となっていた。
以上より、従来から予後不良と考えられていた脳転移先行型転移性脳腫瘍ではあるが、外科的治療を先行させた積極的な集学治療を行えば有意な生存期間が得られるものと考えられた。