ABSTRACT 543(12-1)
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グルタチオン結合ドキソルビシンのGST-P発現抑制による抗腫瘍効果増強:朝倉正1, 澤井崇博1, 橋爪由紀夫1, 横山志郎1, 大川清1, 塚田裕21慈恵会医大・生化1, 2SRL・研)

GSH-DXR conjugate induces suppressive expression of GST-P mRNA and enhances cytotoxicity in rat hepatoma cells : Tadashi ASAKURA1, Takahiro SAWAI1, Yukio HASHIDUME1, Shiro YOKOYAMA1, Kiyoshi OHKAWA1, Yutaka TSUKADA2 (1Dept. of Biochem.(I), Jikei Univ. Sch. of Med., 2SRL. Lab.)

[目的]グルタチオン結合ドキソルビシン(DXR) (GSH-DXR)は、DXRに比べて極めて高いアポトーシス誘導ならびに抗腫瘍効果を示すとともに、多剤耐性細胞でもその効果は維持されている。すでに昨年本学会で、GSH-DXRはその薬物効果としてDXRと異なりグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)活性を非拮抗的に強く阻害(IC50=1μM)することを報告している。GSTアイソザイムの1つGST-Pの発現は薬剤耐性の増強に関与することから、このGST-Pの活性抑制は抗腫瘍効果に強く影響することが考えられた。そこで、GSH-DXRの効果発現機構を検討するため細胞内GST-P mRNA発現量の変動と、抗腫瘍効果増強との関連を検討した。[結果と考察]ラット肝癌細胞AH66をGSH-DXRで処理すると、GST-P mRNAの発現は処理後6時間で一過性の増加を示しその後減少し、処理12時間後には激減、24時間後には検出できなかった。同時に測定したcaspase-3活性はGSH-DXR処理後12時間から検出され、その後時間依存的に増加した。これに伴うDNA断片化はGSH-DXR処理18時間以降で観察された。同様の効果はGST阻害剤のエタクリン酸処理細胞でも観察され、caspase-3活性化とそれに続くDNA断片化が誘発された。以上のことから、GSH-DXR処理で薬物解毒機構としてGST-P mRNAの一過性発現量亢進を示すものの、その後GSH-DXRの薬物効果のため細胞内GST-P mRNA発現量は強く抑制され合わせてGST活性も阻害される結果、caspase-3活性化とそれに続くDNA断片化を誘導することが示唆された。