ABSTRACT 546(12-1)
疎水性制癌剤KRN5500のミセル封入による有害事象の軽減:松村保広1、垣添忠生2、横山昌幸3、岡野光夫3、桜井靖久3、片岡一則4、川口隆憲5(1国立がんセ・中央病・内、2国立がんセ・中央病・病院長、3東京女子医大・医用研、4東大・工、5福島医大・第二病理)
Yasuhiro MATSUMURA1, Tadao KAKIZOE2, Masayuki YOKOYAMA3, Teruo OKANO3, Yasuhisa SAKURAI3, Kazunori KATAOKA3, Takanori KAWAGUCHI5 (1Dept. Int. Med., Natl. Cancer Ctr. Hosp., 2Director. Natl. Cancer Ctr. Hosp., 3Institute, Biomedical Engineering, Tokyo Women's Medical College., 4Dept. Materials Science. Univ. Tokyo., 52nd Dept. Pathology, Fukushima Medical College)
【目的】蛋白合成阻害剤KRN5500は、水に難溶で、種々の有機系溶媒に溶解後、静注されている。しかしながらその有機溶媒によると思われる血管炎などの有害事象が動物実験において認められている。したがって、現行の臨床第一相試験においては、中心静脈ルートからの投与が余儀なくされている。我々はKRN5500をミセル封入させ有機溶媒を用いることなく静注しうる剤型を作製した。今回ミセル封入体の薬効、毒性について検討した。【方法】KRN5500およびそのミセル封入体(KRN/m)の各種ヒト細胞株(大腸癌5、胃癌5、乳癌4)での活性はMTT assayによった。また1×10(*6)個のヒト大腸癌株HT-29をヌードマウス皮下に移植2日後、5.6mg/kgのKRN5500、同当量のKRN/mを尾静脈より2回投与し、腫瘍増殖抑制効果およびマウスの体重変化を観察した。毒性試験として、両薬剤の静注後1日、2週後の主要臓器の病理学的検討および3日後の血液生化学的検討を行った。【結果】in vitro, in vivoにおける抗腫瘍効果については、KRN5500, KRN/m間に有意差はなかった。毒性試験においては、KRN5500投与群において有意な体重減少、壊死性血管炎、肝focal necrosis、また血液尿素窒素の上昇等認めたがKRN/m投与群では何ら異常を認めなかった。【結論】KRN/mはKRN5500の抗腫瘍効果を減じることなく、KRN5500投与による種々の有害事象を克服し得るため、臨床上有用と考える。