ABSTRACT 552(12-1)
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迷走神経が切断されている患者の5HT3受容体拮抗型制吐剤の効果;食道癌・胃癌術後を対象としたクロスオーバー法比較検討:丸山道生,江渕正和,菅野範英,長浜雄志,吉田達也,入江工(都大久保病・外)

Antiemetic efficiency of 5HT3 receptor antagonist for the patients with vagotomy; A randomized crossover trial for the patients with esophagectomy or total gastrectomy: Michio MARUYAMA, Masakazu EBUCHI, Norihide SUGANO, Takeshi NAGAHAMA, Tatsuya YOSHIDA, Takumi IRIE ( Dept. of Surg., Tokyo Metropolitan Ohkubo Hospital)

(目的)食道癌・胃癌に対しての食道切除・胃全摘では横隔膜以上で迷走神経が完全に切断される。嘔吐刺激の求心路を絶たれた場合の5HT3受容体拮抗剤の抗癌剤による嘔吐に対しての効果を検討した。(対象・方法)食道切除6、胃全摘3例。CDDP70-100mgを含む単日化学療法プロトコールで、塩酸アザセトロン10mgを化学療法直前投与および非投与のクロスオーバー比較とした。投与、非投与は準ランダム化した。化学療法当日は6時間毎、24-96時間は12時間毎に嘔吐回数を記録した。制吐作用のある薬剤併用なし。化学療法直前, 5, 24時間後の血中5HT, 5HIAAの測定を行った。(結果)嘔吐回数を0回、1-2回、3-4回、5回以上の順に示すと、0-24時間では投与群;5, 2, 1, 1、非投与群;9, 0, 0, 0。非投与で嘔吐が少なかった。24-48時間では投与群;6, 2, 0, 1、非投与群;7, 1, 1, 0。48-72時間では投与群;4, 4, 0, 1、非投与群;8, 0, 1, 0。72-96時間では投与群;7, 1, 0, 1、非投与群;7, 1, 1, 0。血中5HIAA濃度は投与・非投与群の順で、直前5.9±1.0, 5.6±2.1ng/ml、5時間後9.5±2.4, 8.6±2.5ng/ml、24時間後6.6±1.1, 5.6±1.5ng/mlで両群に差はなかった。(結語)迷走神経が切断されている患者では5HT3受容体拮抗剤の効果は認められなかった。24時間以内では非投与では嘔吐が認められず、投与で嘔吐が認められた。化学療法の5HT放出に対しての効果は投与・非投与で差がなかった。食道癌術後、胃癌術後患者に対しての5HT3受容体拮抗剤の効果は、理論的にも、臨床的にも疑問であり、全国的な検討が必要と考えられる。