ABSTRACT 560(12-2)
MRP の関与した多剤耐性細胞とシスプラチン耐性細胞のCPT-11に対する耐性の機構:陳哲生,古川龍彦,住澤知之,谷 綾子,北薗正樹,秋山伸一 (鹿児島大・医・腫瘍研)
Mechanism of Resistance to CPT-11 in MRP-Mediated MDR C-A120 Cells and Cisplatin-Resistant KCP-4 Cells:Zhe-Sheng CHEN, Tatsuhiko FURUKAWA, Tomoyuki SUMIZAWA, Ayako TANI, Masaki KITAZONO, Shin-ichi AKIYAMA (Cancer Res. Inst., Facult. Med., Kagoshima Univ.)
ヒト癌KB細胞由来のMRPを発現した多剤耐性細胞 (C-A120)と シスプラチン耐性細胞 (KCP-4)が、CPT-11とCPT-11の活性代謝物SN-38に交差耐性を示すことが観察されたので、これらの抗癌剤に対する耐性の機構を調べた。
C-A120 細胞はMRPとcMOAT を発現していたが、シスプラチン耐性細胞KCP-4 はMRPもcMOATも発現していなかった。CPT-11の細胞内蓄積レベルはKCP-4がKB-3-1 細胞の約30%、C-A120細胞がKB-3-1細胞の約70%であった。SN-38の細胞内蓄積は、C-A120、KCP-4 両細胞ともKB-3-1細胞の約 30% であった。次にCPT-11, SN-38 の細胞外へのATP依存性排出を調べた。20分の時点では親株細胞は約20%しかCPT-11を排出してないが、C-A120細胞は約50%、KCP-4細胞は約60%排出した。活性代謝物SN-38の細胞外排出はC-A120、KCP-4両細胞でKB-3-1に比べ著明に亢進していた。DNA topoisomerase Iの発現、活性とSN-38に対する同酵素の感受性は3つの細胞間で差が見られなかった。さらに、耐性細胞内でのCPT-11からSN-38への変換効率は親株に比べ低下していなかった。
PAK-104P とMK571によりC-A120 細胞のCPT-11とSN-38に対する感受性は高くなったが、KB-3-1とKCP-4細胞のCPT-11とSN-38に対する感受性は変化しなかった。以上の結果から、CPT-11とSN-38はMRPにより輸送されること、KCP-4細胞にはMRP、cMOATとは異なるCPT-11とSN-38を排出するポンプの存在することが示唆された。