ABSTRACT 563(12-2)
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分化誘導剤sodium butyrateによるMRP・LRPの発現:北薗正樹1、2、竹林勇二2、陳哲生1、谷 綾子1、古川龍彦1、住澤知之1、高尾尊身2、愛甲 孝2、秋山伸一1 (鹿児島大・医・1腫瘍研、2第一外科)

Induction of MRP and LRP by the differentiation-inducing agent, sodium butyrate in human colorectal carcinoma cells : Masaki KITAZONO1、2, Yuji TAKEBAYASHI2, Zhe-Sheng CHEN1, Ayako TANI1, Tatsuhiko FURUKAWA1, Tomoyuki SUMIZAWA1, Sonshin TAKAO2, Takashi AIKOU2, Shin-ichi AKIYAMA1 (1Cancer Res. Inst., 2First Dept. of Surgery, Facult. Med., Kagoshima Univ.)

  Lyn A. Mickleyらは、ヒト大腸癌のcell lineであるSW-620を用い、分化誘導剤sodium butyrateで処理すると、薬剤排出ポンプであるP-糖蛋白(P-gp)が発現することを報告した。我々は同様な条件でで分化誘導を行い、MRP及びLRPの発現を誘導しえた。SW-620をNaBにより2週間処理すると各種抗癌剤(アドリアマイシン、ビンクリスチン、VP-16、グラミシジンD、タキソール)に対して耐性となった。アドリアマイシン、ビンクリスチン、タキソールに対する耐性は、P-gpとMRPのトランスポートを阻害するピリジン誘導体PAK-104Pによって克服することができた。ビンクリスチン、タキソール、アドリアマイシンの蓄積は、NaB処理した細胞と未処理の細胞とで差がなかった。蛍光顕微鏡を用いてアドリアマイシンの細胞内分布を観察したところ、未処理の細胞では核に強く蓄積しているのに比べ、NaB処理細胞では核内にはほとんどみられず、細胞質内に蓄積していた。さらにPAK-104P存在下ではNaB処理細胞においても核内へのアドリアマイシンの蓄積が認められた。
これらの所見は大腸癌において分化度とP-gp、MRP、LRPの発現が相関していることを示すものであり、またNaB処理により分化誘導した細胞での各種抗癌剤に対する耐性にP-gp,MRPは関与しておらず、LRPの関与が示唆された。さらに、LRPの関与したアドリアマイシン耐性がPAK-104Pにより克服できる可能性を示した。