ABSTRACT 565(12-3)
DuocarmycinAとDistamycinAのヒト癌細胞に対する協同的作用:廣田三佳子1、寺岡弘文1、藤原健志2、峰下哲1、杉山弘2 (1東京医歯大・難治研、2東京医歯大・医器研)
Cooperative effect of duocarmycin A and distamycin A on human carcinoma cells: Mikako HIROTA1, Hirobumi TERAOKA1, Tsuyoshi FUJIWARA2, Satoru MINESHITA1, Hiroshi SUGIYAMA2 (1Med. Res. Inst., Tokyo Med. Dent. Univ., 2Inst. Med. Dent. Engineer., Tokyo Med. Dent. Univ.)
[目的] 抗がん性抗生物質DuocarmycinA (Duo) のDNAアルキル化の位置は、DistamycinA (Dist) が共在することによって、Duo単独の場合とは異なる塩基配列の部位に移り、しかもDNAアルキル化効率は非常に昂進する。本研究は、単離DNAレベルで得られたこれらの効果を、細胞レベルにおいて実証するために、ヒト肺癌培養細胞 (HLC-2) を用いて、Dist共在下でのDuoの細胞毒性を検討した。
[実験・結果] 約40%コンフルエント状態時のHLC-2にDistとDuoを加え3日間培養した後、細胞増殖測定キットを用いて細胞毒性評価を行った。Duo単独添加のIC50 は0.03 microg/ml、Dist単独では約16 microg/ml を示した。単独ではほとんど細胞に影響のない濃度 (0.5 microg/ml)のDist存在下におけるDuoのIC50は0.003 microg/ml であった。すなわち、Duo単独の場合に比べDist存在下では、Duoは約10倍の細胞毒性増強効果を示した。他のヒト癌細胞株に対しても類似の効果が示唆された。
[結論] 従って、単離DNAレベルで観察されたDist共存下におけるDuoのDNAアルキル化の昂進が、ヒト肺癌細胞などに対する抗腫瘍効果の増強として細胞レベルにも反映したものと考えられる。現在、細胞増殖抑制の機構についても検討中である。