ABSTRACT 572(12-3)
食道癌におけるnm23-H1の発現とシスプラチン(CDDP)感受性:飯塚徳男,林 弘人,安部俊弘,山本光太郎,硲 彰一,森 尚秀,岡 正朗 (山口大 医 2外)
Nm23-H1 expression and sensitivity to CDDP in esophageal cancer.: Norio IIZUKA, Hiroto HAYASHI, Toshihiro ABE, Kohtarou YAMAMOTO, Shoichi HAZAMA, Naohide MORI, Masaaki OKA (Dept. of Surg.II, Yamaguchi Univ.)
【背景因子】我々は食道癌におけるnm23-H1の発現低下症例は、CDDP,VP-16,5FUを用いたEFP療法施行後の生存率が明らかに低いことを報告した(第56回癌学会)。nm23-H1は転移抑制遺伝子であり、今回、antisense transfection法を用い、浸潤能とともに抗癌剤感受性との関連を検討した。
【対象と方法】antisense nm23-H1発現pRC/CMV plasmidを作製し、食道癌細胞株YES-2にリポフェクション法で遺伝子導入し、G418にてselectionを行った。得られたG418耐性クローンのうち、RT-PCR法、Western Blotにて、nm23-H1の発現低下が確認された3クローンのVP-16, 5-FU, CDDPに対する感受性をMTT assayを用い、YES-2/Neoと比較検討した。さらに、DiOC6(3)を用いたミトコンドリア膜電位差(ΔΨm)およびDNAラダ−等の解析により、nm23-H1の発現とCDDPによるアポト-シスとの関連性を検討した。
【結果】MTT assayによるCDDPのIC50は、nm23-H1の発現が1/2に低下したクローンでは2倍に、1/20以下と著明な発現低下を示したクローンでは4倍に増加した。CDDP(2.5,5, 10μg/ml, 24hr)によるΔΨmの消失率はnm23-H1低下クローンにおいて10.7%, 13.4%, 42.9%であったのに対し、YES-2/Neoでは37.5%, 67.3%, 86.8%と明らかに高率であり、また、DNAラダ−の解析にて、これらnm23-H1発現低下クローンはCDDPにより誘導されるアポトーシスに抵抗性を示すことが明らかとなった。nm23-H1の発現低下とVP-16、5-FU感受性との間に明確な関連性は得られなかった。また、MatrigelTMを用いたinvasion assayにて、nm23-H1の発現と浸潤能力との関連性は認められなかった。
【結論】nm23-H1の発現低下食道癌細胞は、CDDPによるアポトーシスに対し、抵抗性を示すことが確認された。