ABSTRACT 628(14)
部分欠失PI3-kinase, Δp85導入による放射線抵抗性悪性脳腫瘍細胞の放射線感受性化:立入誠司1, 宮越順二2, 平岡真寛1(京大・医・1放, 2放遺)
Radiosensitization of radioresistant brain tumor cells overexpressing Dp85 (PI3-kinase): Seiji TACHIIRI1, Junji MIYAKOSHI2, Masahiro HIRAOKA1(1Dept. Radiol., 2 Dept. Radiat. Genet., Fac. Med., Kyoto Univ.)
[目的]PI3-kinaseは、細胞増殖、細胞分化、アポトーシス、糖輸送、細胞形態など、さまざまな細胞現象に関わっていることが知られている。PI3-kinaseの阻害剤であるwortmanninには放射線増感作用があるが、ATMやDNA-PKなどのPI3-kinase family全体への作用を見ている可能性があり、発現ベクターを用いることによってPI3-kinaseの放射線感受性における役割を検討した。
[材料と方法]PI3-kinaseの調節サブユニットであるp85の野性型、欠失型cDNAをpcDNA3ベクターに組み込み、発現プラスミドを作成した。この発現プラスミドをヒト悪性脳腫瘍由来細胞(T98およびMO54細胞)に導入し、p85を過剰発現しているクローンを得た。放射線感受性はコロニー形成法を、細胞死はFACScan, DNA ladderにて検討した。
[結果と考察]欠失型p85を過剰発現しているクローンは、親株より放射線に対し高感受性になった。p53が変異型でより放射線抵抗性のT98細胞でより強い放射線感受性化が見られ、sublethal damage repairの著明な減少も認められた。細胞死分画では、同クローンでアポトーシスの増加が認められた。以上の結果は、PI3-kinaseが放射線感受性の決定要因の一つである可能性を示唆する。