ABSTRACT 635(14)
X線照射によるヒト大腸癌細胞株HT29のMUC1ムチン発現機構の解析:平野 和也1, 康 芸1, 酒井 一夫1, 鈴木 紀夫1, 入村 達郎2 (1東大・医・基放、2東大・薬・生体異物)
Characterization of the expression of MUC1 mucin in human colon carcinoma HT29 cells after irradiation : 1Kazuya HIRANO, 1Yun KANG, 1Kazuo SAKAI, 1Norio SUZUKI , and 2Tatsuro IRIMURA (1Dept. of Radiat. Oncol., Fac. of Med., 2Div. of Cancer Biol. and Mol. Immunol., Fac. of Pharmaceutical Sci., Univ. of Tokyo)
[目的] 本研究ではヒト大腸癌細胞株HT29を用いて、X線照射後発現するMUC1ムチンについて、MUC1蛋白量、mRNAレベルの変化、およびMUC1遺伝子量を調べ、その発現機序を調べることを目的とした。
[方法] HT29細胞にX線(200kV-20mA, 0.5 mm Cu + 1.0 mm Alフィルター)を照射し、1〜5日培養後、細胞を回収し、MUC1蛋白量をmAb MY.1E12 (成熟型MUC1特異的)及びmAb HMFG-2 (未成熟型MUC1特異的)を用いてWestern blot法にて測定した。MUC1 mRNA量はRT-PCRにより調べた。またMUC1遺伝子量をSouthern blot法により測定した。
[結果、考察] 細胞中のMY.1E12陽性成熟型のMUC1ムチン(500kDaと390kDa)、およびHMFG-2陽性未成熟型のMUC1ムチン(350kDaと240kDa)が、6Gy照射後1日から 4日まで検出された。照射後4日では1〜10Gy線量に依存して増加することが判明した。またX線6Gy照射によるMUC1ムチンのmRNAの増加は照射後約1〜2日から検出された。MUC1遺伝子をプローブとしたSouthern blotを行い、HT29とMUC1を常時産生しているヒト膵臓癌細胞株Capan-1で比較したところ、MUC1遺伝子のコピー数に違いは無かった。以上よりHT29の放射線照射によるMUC1ムチン発現は転写レベルで調節され、MUC1コア蛋白の合成が増加することが示唆された。