ABSTRACT 645(15-1)
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ウイルムス腫瘍におけるWT1遺伝子の欠失と点変異、11番染色体短腕のLOH(Loss of Heterozyg-osity)の検討: 中舘 尚也,公文 和子,土屋 登嗣,金子安比古(埼玉がんセ・病・化療)

Mutation and deletion of the WT1 gene and loss of heterozygosity (LOH) on chromosome arm 11pin Wilm's Tumors in Japan : Hisaya NAKADATE, Kazuko KUMON, Takashi TSUCHIYA, Yasuhiko KANEKO (Saitama Cancer Ctr. Hosp. )

【目的】 WT1遺伝子はウイルムス腫瘍の発生に関与する癌抑制遺伝子の1つで、その欠失や変異の頻度は欧米から10%以下と報告されている。東アジアにおけるウイルムス腫瘍の発生頻度は欧米と比較して著しく低いことが知られている。そこで、本邦でのウイルムス腫瘍について、WT1の分子遺伝学的検討をおこない、欧米の報告と比較した。【対象と方法】対象は本邦で診断された散発性ウイルムス腫瘍81例である。WT1のcDNA probe(WT33)を用いたサザン法、 PCR-SSCP、DNA SequencingによるWT1のExon2から10までの変異の解析、ならびに正常組織DNAが入手できた65例でRFLPマーカーと5つのマイクロサテライトマーカーによる11pと11qのLOH解析をおこなった。【結果および考案】81例中7例(9%)にホモ欠失、7例(9%)にミスセンスまたはナンセンス変異を認めた。後者7例中1例にヘミ欠失を、また、点変異を伴わないヘミ欠失を2例に認めた。65例中20例で(31%)11pにLOHを認め、その領域は5例(8%)が11p13のみ、3例(5%)が11p15のみ、12例(18%)が11p13-11p15であった。この20例中4例にホモ欠失、1例にヘミ欠失と点変異、3例に1 allele の点変異、残り12例には欠失も点変異も認めなかった。日本人のウイルムス腫瘍のWT1ホモ欠失、点変異の頻度は18%で欧米の頻度の約2倍である。これらの分子遺伝学的特徴の差が発生頻度の違いと関連していると考えられた。