ABSTRACT 647(15-1)
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肺癌におけるHIC-1遺伝子発現の抑制と予後との関連:林 盛昭1,得地令郎1,橋本毅久1,林 慎一1,中川健2,石川雄一3,西田一典1,土屋繁裕2,奥村 栄2,土屋永寿11埼玉がんセ・研,2癌研・呼吸器外科,3病理)

Association of HIC-1 suppression in tumor with prognosis in lung cancer: Moriaki HAYASHI1, Yoshio TOKUCHI1, Takehisa HASHIMOTO1, Shin-ichi HAYASHI1, Ken NAKAGAWA2, Yu-ichi NAKAGAWA3, Kazunori NISHIDA1, Shigehiro TSUCHIYA2, Sakae OKUMURA2, Eiju TSUCHIYA1(1Saitama Cancer Ctr. Res. Inst., 2Dept. of Chest Surgery, and 3Pathology,Cancer Inst.)

HIC-1遺伝子は第17番染色体短腕の高頻度欠失部位に存在し、この領域の新たな癌抑制遺伝子の有力候補である。遺伝子産物はある種の転写因子で細胞の増殖を調節すると考えられているが、癌の発生、進展における役割は明かでない。前回の本総会において、手術切除した肺癌の約45%で腫瘍のHIC-1 mRNA発現が正常肺の1/2以下であることを示した。今回、腫瘍のHIC-1の発現量と肺癌予後に有意の関連性が認められることを報告する。
 肺癌86症例の腫瘍(T)および正常肺部(L)よりRNAを抽出、半定量的RT-PCRによりHIC-1のmRNA量を測定した。腫瘍、正常肺ともに検出可能であった54例のうち、腺癌30例と扁平上皮癌16例について解析した。HIC-1 mRNA量の平均T/L比は組織型、病期別で有意差はなかったが、その値が0.5以上の高発現症例(n=25)は、低発現症例(n=21)より有意に生存期間が長く(P=0.034)、5年生存率はそれぞれ80%、46%であった。病期I期の症例に限定し比較した場合も同様に高発現症例の5年生存率 100%(n=9)に対し、低発現症例では61%(n=8)であり、生存期間にも有意差がみられた(P=0.047)。これらの結果から、HIC-1の抑制は腫瘍の悪性化に関与しており、肺癌の予後因子として有用であると考えられる。