ABSTRACT 698(16)
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不治を知らされたがん患者の治療又は療養生活の選択:岡崎伸生、宮田佳典、花塚和伸、三橋彰一、植草義史、大倉久直(茨城中央病・茨城地域がんセ・内)


Choice of own treatment and/or care modalities of patients after knowing of their incurable cancer: Nobuo OKAZAKI, Yoshinori MIYATA, Kazunobu HANATSUKA,Shoichi MITSUHASHI, Yoshifumi UEKUSA, Hisanao OHKURA (Dept.of Int. Med.,Ibaraki Pref.Ctr. Hosp.and Regional Cancer Ctr.)


[目的]QOLの高い進行がん患者の診療について検討する目的で、不治と診断されたがん患者の選択した治療をretorospectiveに分析した。[対象および方法]対象症例は、過去3年間に不治の診断を受けた消化器がん患者72名と乳がん患者8名、合計80例である。患者は治癒の可能性の無いことを伝えられ、その上で、選択可能な治療について説明を受けた後、患者本人の選択により治療方針が決められた。その際、制がん剤療法については治癒は期待できないこと、症状緩和療法のみの選択もあること、および延命よりもQOLを優先に医療を行うホスピス・ケアも実行していることを示した。[結果]前治療のない19例中14例は、すぐに制がん剤療法に入ることを希望した。これに対して既に手術と化学療法を受けてきた18例では、すぐに化学療法に入ることを希望した症例は4例のみで、6例はホスピス・ケアを選択した。ホスピス・ケアを選択した14例は全て前治療のある例で、うち11例はPS3であった。しかし、初回治療例ではPS3または4でも、化学療法を選択する傾向を示した。[考案及びまとめ]進行がん患者においては、治癒のないことを知っても延命に対する期待は捨て難く、特に初回治療例においては、積極的に制がん療法を希望した。ホスピス・ケアの選択にはがん治療の体験が重要な背景因子となっていた。以上より進行がん患者が、症状緩和療法、あるいはホスピス・ケアを受け入れQOLの高い療養生活を送るためには、現在の医療では手の届かない病態にあることの認識が重要と推定された。