ABSTRACT 703(17)
わが国における女性の身体特性の乳がん罹患リスクへの影響に関する検討:広瀬かおる1,田島和雄1,浜島信之1,嶽崎俊郎1,井上眞奈美1,黒石哲生1,三浦重人2(1愛知がんセ・研・疫学、2愛知がんセ・乳腺外科)
The relationship between body size and breast cancer among Japanese women : Kaoru HIROSE1,Kazuo TAJIMA1, Nobuyuki HAMAJIMA1, Toshiro TAKEZAKI1,Manami INOUE1,Tetsuo KUROISH1 and Shigeto MIURA2(1Div.Epidemiol, Aichi Cancer Cent. Res.Inst.,2Breast Surg., Aichi Cancer Cent.)
【目的】乳がん罹患率の高い欧米諸国では肥満との関連について多くの報告がなされてきたが、日本女性は欧米に較べると比較的Body Mass Index (BMI)が小さい。そこで日本において女性の身体特性の乳がん罹患リスクへの影響を詳細に検討することを目的として症例・対照研究を実施した。
【方法】1988年から実施している愛知県がんセンター病院の全新来患者を対象とした自記式生活歴調査のデータに基づき、30歳以上で当院において1989年から1995年6月までに乳がんと診断された1,359名を症例群、がんの既往のない非がん女性患者24,207名を対照群とし、諸関連要因の影響を補正するためロジスティックモデルによりオッズ比(OR)を算出した。
【結果】(1)現在のBMIが大きい場合、閉経後乳がんでORは著明に高かった(BMI>24.1群における ORは 2.08[95%CI:1.49-2.92])。(2)20歳の頃のBMIではBMIがより大きい群で閉経前後ともに1より低いORが観察された。(3)20歳の頃からのBMIの変動を世代別に検討すると、60歳以上の年齢群で特に影響が大きく、BMIが3.55以上増加した群ではBMIの無変化群(-0.84〜0.77)と比較するとORは2.11と高い値を示した。(4)BMIの変動の乳がん罹患リスクに与える影響は20歳の頃のBMIの程度とは無関係に認められた。
【考察】今後増加が予測される乳がんの予防のためには我が国においても20歳の頃のBMIにかかわらず閉経後の体重増加、特に60歳以上における肥満に注意を払うことが重要と考えられる。