ABSTRACT 706(17)
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胃、肺および乳がん患者の生存率の年次推移とその改善要因の検討:味木和喜子, 津熊秀明, 大島 明(大阪成人セ・調査)

Time trends of survival for patients with stomach, lung and breast cancer, and factors attributed to their improvement : Wakiko AJIKI, Hideaki TSUKUMA, Akira OSHIMA (Dept. Cancer Control & Statistics, Osaka Med. Ctr. for Cancer and Cardiovascular Dis.)

【目的】主要部位について、がん患者の生存率を地域レベルで計測し、予後改善の有無およびその要因を検討する。
【方法】大阪府がん登録資料より、1975-89年に診断された大阪府内在住者(大阪市を除く)を対象に、地域がん登録で推奨されている標準方式を用いて5年相対生存率(RSR)を計測した。診断時の進行度を、限局、領域および遠隔に分類し、その分布と進行度別RSRの推移を観察した。
【成績】1975-77年と1987-89年とで比較すると、(1)RSRは、胃で27.9%から47.2%、肺で6.2%から11.7%、乳房で67.6%から83.6%に、それぞれ向上した。(2)胃では、限局の割合が増加し(25.2%→41.4%)、また、RSRは限局(65.4%→88.6%)および領域(22.7%→33.4%)で向上した。(3)肺では、限局のRSRは20.0%から46.6%に向上したが、他の部位のそれよりもなお低かった。限局割合の増加はみられなかった(20.4%→17.2%)。(4)乳房では、限局のRSRは観察当初より高く(90.8%→96.3%)、この期間に限局割合の増加と(41.1%→54.6%)、領域のRSRの向上(62.7%→78.8%)が観察された。
【結論】胃および乳房では、早期診断の普及と治療の進歩とが、患者のRSRを向上させたと推測される。肺では、治療の進歩が、一部にみられるものの、その効果は他部位よりも限られており、早期診断も普及していない。第1次予防が重要と考える。