ABSTRACT 707(17)
システムモデルを用いたがん診療の経済分析
濃沼信夫、伊藤道哉(東北大・医・医療管理)
Economic analysis of cancer treatment on system models, taking QOL into consideration: Nobuo KOINUMA, Michiya ITO (Dep.of Health Administ. and Policy, Tohoku Univ. School of Med.)
主要な7種のがんの診療経過のシステムモデルを開発し、累積医療費と労働生産性とのバランスシートから、がん医療への資源投入量、診療の質と経済効果との関連について分析した。進行は若年で早く、stageが進むと加速する、医療費は若年者で高いなど、がん診療の複雑な経過を可能な限り組み込む条件を設定した。経過ルート数は、胃50、大腸51、肺51、乳房52、子宮77、前立腺109である。男の胃がんの費用便益比は40-44 歳4.57、50-54歳3.57、60-64 歳1.56で、全年齢では生涯医療費約1830億円、賃金稼得額約3000億円で1.64となる。男の結腸がんでは、例えばstage Iで発見され手術を経て治癒する50-54歳の患者は105人で、その期待生存は27.0年、QALYsは24.5年となる。一方、stage IIIで発見され手術、緩和ケアを経て死亡する同年齢の患者は5人で、期待生存は4.5年、QALYsは2.0年である。費用便益比は、男で肺0.36、結腸0.86、直腸0.93、前立腺0.37、女で胃1.03、乳房1.50、肺0.22、結腸0.46、直腸0.54、子宮1.23で、1 QALYs 当たり医療費は年齢とともに増加し、肺、大腸がんで高い。