ABSTRACT W01-3(W01)
テロメレースによる細胞寿命の延長:井出利憲(広島大・医)
Extension of proliferative lifespan of human cells by introduction of telomerase : Toshinori IDE (Dept. Cell Mol. Biol., Hiroshima Univ. Sch. Med.)
ヒト正常体細胞にはテロメレース活性がないため,DNA複製ごとにおきるテロメア末端DNAの短縮が補償されず,テロメアDNAが一定サイズまで短縮すると細胞増殖が停止するものと理解されている。不死化細胞あるいは癌細胞の多くはテロメレース活性を有し,複製によるテロメア短縮がおきず,無限分裂寿命が保証される。テロメレースの鋳型RNA(hTERC遺伝子)は多くの正常細胞でも発現しており,逆転写酵素部分(hTERT遺伝子)を導入することでテロメレース活性があらわれる。東工大の石川らとの共同研究により,石川らが単離したhTERTのcDNAをヒト正常線維芽細胞およびそのSV40トランスフォーム細胞(有限分裂寿命)に導入したところ,正常細胞では若干の,トランスフォーム細胞では数十回の分裂寿命延長がみられたが,多くのクローンは絶えた。この期間中,テロメレース活性は保持されたが,テロメア長の延長は見られなかった。ヒト細胞の種類によっては,不死化するためには,テロメレース活性の発現だけでは十分条件にはならない場合があることを示している。