ABSTRACT W03-2(W03)
カドヘリン細胞接着系と増殖因子受容体系の相互作用によるがん浸潤制御:落合淳志、山田哲司、広橋説雄 (国立がんセ・研・病理)
Interaction between the cadherin cell adhesion system and the growth factor receptor system in invasion and metastasis of human cancers: Atsushi OCHIAI, Tesshi YAMADA, Setsuo HIROHASHI (Pathol. Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst.)
大腸がんの主体をしめる分化型がんでは、細胞接着分子カドヘリン・カテニンの構造異常は認められていない。肝転移を伴う大腸がんの腫瘍先進部では、組織学的にがん細胞はしばしば間質細胞の誘導を伴いつつ、個々バラバラとなり間質に浸潤している。しかしその転移巣では細胞間接着は再び回復し明瞭な腺管構造を形成しており、大腸がんの浸潤・転移にはカドヘリン細胞接着系の一過性の不活化が関わっていると考えられる。我々は、これまでにc-erbB-2およびEGF受容体など増殖因子受容体によるβカテニンのチロシンリン酸化を介したカドヘリン細胞接着不活化の機構を報告してきたが、実際の大腸がん手術材料の検討でも、がん浸潤部でEGF受容体発現の上昇ならびにβカテニンのチロシンリン酸化の亢進を確認した。また、βカテニンは増殖因子受容体だけでなくAPC腫瘍抑制遺伝子産物とも結合し、APC遺伝子産物によりその発現量の調節を受ける事が明らかとなっているが、がん浸潤部においてβカテニン発現の上昇する症例が認められることより、カドヘリン細胞接着系は増殖因子受容体系だけでなく腫瘍抑制系とも相互作用し、がん浸潤・転移に重要な役割を果たすと考えられた。