ABSTRACT W03-3(W03)
HGF/HGF誘導因子を介した癌悪性化機構と浸潤・転移、腫瘍血管新生阻止:中村敏一, 松本邦夫(阪大・医・バイオセ)
Malignant tumor progression through HGF/HGF-inducer loop and prevention of invasion/metastasis and tumor angiogenesis : Toshikazu NAKAMURA, Kunio MATSUMOTO (Biomed. Res. Center, Osaka Univ. Med. School)
HGF(hepatocyte growth factor)はダイナミックな組織構築を促す生物活性をもち、肝再生に代表される器官再生を駆動する生理機能に加え、発生過程においては上皮−間葉相互作用のメディエーターとして様々な器官の形成を担っている。一方、最近の研究から、多くの癌はHGFのもつ組織化活性ともいうべき生物活性を巧妙に使って浸潤・転移能を高めていることが明らかになってきた。
癌細胞の多くは自らHGFを産生しないが、間質線維芽細胞に対してHGF産生を促す様々なHGF誘導因子を分泌する一方、間質に由来するHGFは癌細胞の遊走、浸潤を強く促進した。すなわち、癌細胞由来のHGF誘導因子、間質由来のHGFからなるHGF誘導因子−HGFループが癌−間質相互作用を介した癌悪性化機構の一つであることを明らかにした。そこで癌悪性化阻止を目的として、HGFアンタゴニストの調製を試みたところ、4個のクリングルドメインを有するHGFアンタゴニスト(HGF/NK4)の調製に成功するとともに、HGF/NK4はHGFアンタゴニストとしての活性に加え、血管新生阻害作用をもつことを見い出した。HGF/NK4はin vitroにおいて癌の浸潤、内皮細胞の増殖を抑制するのみならず、in vivoにおいて移植癌の増殖、浸潤・転移さらには腫瘍血管新生を抑制した。
癌の浸潤・転移、腫瘍血管新生阻止は最も有効な癌治療につながるものと考えられている。HGFアンタゴニスト(HGF/NK4)ならびにその遺伝子をgene drugとして用いる遺伝子治療法は浸潤・転移、腫瘍血管新生阻止を標的とする新しい癌治療法となることが期待される。