ABSTRACT W04-4(W04)
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がん患者への精神医学的アプローチ(サイコオンコロジー): 山脇成人(広島大・医・神経精神医学)

Psychiatric approach to cancer patients(Psychooncology): Shigeto YAMAWAKI (Dept. of Psychiat. and Neurosci., Hiroshima Univ. Sch. of Med.)

医療は本来、患者に生物学・心理学・社会学的な観点から対応すべき行為であるが、近代医学は生物学的側面に重点を置いて発展し、患者の心理・社会的側面を軽視してきた。しかし近年、インフォームド・コンセントやカルテ開示など患者意識の変化は著しく、病名告知は必然的となってきているにもかかわらず、それに伴う患者の心理・社会的問題への対策は、わが国ではほとんど皆無に等しい。欧米ではがん医療に精神科医がチームの一員として参加し、患者の精神的問題に対応するシステムが確立し、この領域をサイコオンコロジー(精神腫瘍学)と呼んでいる。本ワークショップではこの概念およびわが国の現状と課題について報告する。
サイコオンコロジーは、1)がんの診断・治療が患者や家族の心理・社会的機能に及ぼす影響、2)精神状態が免疫・内分泌系を介して、がんの発生・進行の予防に寄与する可能性などを研究し、検査、診断時から末期に至るまでの全て段階のがん患者を対象とする。
がん患者は通常、1)否認、2)怒り、3)取り引き、4)抑うつ、5)受容を経て死を迎えるとされるが、全身状態の良好ながん患者を対象とした調査では、47%に精神医学的診断がつき、その約7割が不安・抑うつを伴う適応障害であった。これに対し、精神療法は抗不安薬、抗うつ薬の投与が必要とされる。一方、緩和医療の対象である末期がん患者では54%に診断がつき、約6割が認知障害を伴うせん妄であり、ハロペリドールやミアンセリンが有効とされている。
がん患者への精神療法的介入が生存期間を有意に延長させたという報告が相次ぎ、感情状態のがん進展に及ぼす影響が、精神免疫学的な観点から明らかにされつつある。
わが国では、国立がんセンターに精神腫瘍学研究部が設置されたが、がん医療に精神科医が関与する状況にはなく、その教育・診療システムの構築が急務である。今後、遺伝子診断などが進めば、より早期から患者の心理・社会的問題の支援システムが求められることは必至であり、サイコオンコロジーの重要性は増加するであろう。