ABSTRACT W05-1(W05)
遺伝子情報ネットワークとがん研究:中村祐輔(東大・医科研・ヒトゲノム)
Human genome analysis and cancer research: Yusuke NAKAMURA (Human Genome Ctr., Inst. Med. Sci., Univ. of Tokyo)
ゲノム解析研究や分子生物学的研究によってヒトの癌の発生や進展に関与する多数の癌関連遺伝子が単離されてきた。しかしながら、ひとつの遺伝子異常によって細胞内に引き起こされる変化は非常に複雑であり、平面的に物事をとらえる考え方では、癌化機序を完全に把握することは不可能である。そこで、癌関連遺伝子群の発現調節機構を多面的に解明していくことを目的として、転写因子である癌抑制遺伝子p53をモデルにがこの蛋白が制御している遺伝子群を(1)酵母を用いてp53結合配列を単離する方法と(2)ディフェレンシャルディスプレー(DD)法を用いてp53により発現の変化する遺伝子を単離する方法を利用して解析した。p53遺伝子産物は転写因子として機能することが知られており、複数の下流遺伝子の発現調節を介して、細胞周期の停止・アポトーシスの誘導・血管新生の抑制などに関与している。われわれはふたつの方法を用いて、これまでに、直接的もしくは間接的にp53により発現が制御されている20種類以上の遺伝子を同定した。これらの遺伝子は、酸化ストレス・抗癌剤耐性など多彩な生理活性に関与しており、p53遺伝子を頂点とする遺伝子発現情報ネットワークを解明する手がかりとなるものと考える。