ABSTRACT W05-2(W05)
分子細胞遺伝学的アプローチによるがんのゲノム異常解析:稲澤 譲治(東京医歯大・難治研・遺伝疾患研究部門・分子細胞遺伝)
Analysis of genomic alterations in neoplastic tumors by molecular cytogenetic approaches: Johji INAZAWA (Department of Genetics, Medical Res. Inst. Tokyo Med. Dent. Univ.)
発癌の過程で複数の遺伝子異常が多段階的に起こり、その蓄積が癌を生物学的にも臨床的にも、より悪性の形質獲得へと導いている。現在までに多くの癌遺伝子や抑制遺伝子が明らかにされてきた。しかし、われわれが臨床の場で実際に遭遇する固形腫瘍、特に上皮系腫瘍は想像を遥かに超える多彩で複雑なゲノム異常を起こしている。われわれはFISH法を基盤にしたゲノム解析手法であるCGH法やSKY法を導入して腫瘍に生じたゲノム異常をスクリーニングし、見出されてきた新規の染色体異常領域から新たな癌関連遺伝子を単離し、さらにこれらが癌の悪性度診断の新たな指標に成りうるか否かの検討を進めている。いくつかの新たな遺伝子増幅領域が見出されてきている。原発性胃癌ならびに悪性線維性組織球腫(MFH)では、第8番染色体短腕8p22-23(8p23.1を共通領域とする)に高度増幅領域を見出し、同領域より遺伝子を単離した。本遺伝子は leucine-rich tandem repeat構造をもち、MFH増幅例で高発現していた。また、食道癌や白血病症例では、過去に遺伝子増幅の報告がない既知の転写因子や転座切断点遺伝子の増幅を検出した。これらの事実は、過去に染色体転座切断点が多くの癌関連遺伝子単離の標的となってきたの同様に、CGHやSKYで検出する染色体異常が未同定の癌関連遺伝子の単離に向けて重要な指標を提供することを示すものである。