ABSTRACT W06-5(W06)
がん治療の評価:浜島信之(愛知がんセ・研・疫学)
Evaluation of cancer treatment: Nobuyuki HAMAJIMA (Div. of Epidemiol., Aichi Cancer Ctr. Res.Inst.)
がん治療を評価するためには、定義された対象者における治療方法と予後の関連の強さを測定することが必要となる。これには、観察による研究と前向きの介入研究とがある。介入研究は臨床試験であり、実施にあたっては観察による研究結果が非常に有用な情報となる。介入研究や観察研究から得られた関連の強さの指標(治療効果の差や相対危険度など)は、メタアナリシスにより統合される。関連の強さを測定する研究は、更に医療判断学での基礎データとなり、医療現場で合理的な判断に利用される。また逆に、医療判断学からどの程度の効果の差であれば介入研究で検証する必要があるか検討できる。
介入研究の大部分は薬剤の認可や再評価のために行われる。これらの研究には、製薬会社が莫大な費用を投じ臨床家や生物統計学者の協力を得て、実施されている。製薬会社の利益活動としての薬剤販売という社会的な側面があるため、臨床試験の区分、実施方法、研究組織等について詳細な規定(GCP)がある。科学性とともに政策的な点から実施手順が規定されており、疫学者であっても規定に熟知していなければ対応が難しく、そのため臨床試験は1つの専門分野を形成しているとも言える。
観察研究の手法を用いた治療の評価は、発生要因を扱う研究とほとんどかわるところがなく、疫学の範疇に入る。マンテル・ヘンツェルのオッズ比の統合からスタートしたメタアナリシスでの解析手法も疫学の範疇に入るものであり、解析対象とする研究報告の選択をめぐるバイアスの議論も疫学研究の解釈と同一のものと言える。個々の患者での医療選択に直結する医療判断学は疫学にとっては新しい分野であるが、地域全体の予防活動の評価と同様な手法をとる。財政的な裏付けが乏しいこれらの研究について、臨床研究者を支援することは疫学者の1つの役割であろう。