ABSTRACT W10-1(W10)
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核内受容体とがん: 井上 聡1,2,大内 尉義2,村松 正實1 (1埼玉医大二生化, 2東大医老年病)

Nuclear receptor and cancer: Satoshi INOUE1,2,Yasuyoshi OUCHI2, Masami MURAMATSU1 (1Dept. of Biochem, Saitama Med School, 2Dept. of Geriatric Med, Fac of Med, Univ. of Tokyo)

ステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、レチノイン酸の受容体は、核内で標的遺伝子の転写調節領域に結合し、リガンド依存性に転写因子として働いている。これらの受容体は、共通の構造をもち、核内受容体スーパーファミリーを形成している。ここでは核内受容体とがんとの関係について、いくつかの最近の知見を示す。多くの白血病で、転写因子をコードする遺伝子が転座により融合タンパクを作り、細胞増殖、分化の調節機構の破綻を起こしていることが知られている。核内受容体の一つであるレチノイン酸受容体α(RARα)は、急性前骨髄球性白血病(APL)のt(15,17)転座においてPML-RARα融合タンパクを作っている。PMLはRINGフィンガー、Bボックス、coiled-coil構造をもつタンパクで、核内に複数存在するPODと呼ばれる0.5μm程度の球状の小構造に局在している。われわれは、酵母のTwo-hybrid cloning法によりPODに存在する新しいタンパクを同定し、PODへの局在を検討した。それらタンパクはPODでの局在が示されると同時に、ウィルス感染など一定の条件下ではPODから離れることが判明した。しかも、POD自体の形態、大きさや数も細胞の状態によって動的に変化することが示された。さて、転座によるPML-RARαの形成により、正常のPOD構造は失われ、細胞増殖、分化の異常が起きる。そして、白血病由来の細胞をレチノイン酸処理すると正常なPOD構造が回復し、細胞は分化するようになる。同様に患者にレチノイン酸を投与すると治療薬として用いることができる。一方、APLのt(11,17)転座においてはPLZF-RARα融合タンパクが作られるが、この型の白血病細胞はレチノイン酸療法により分化誘導されず、治療に抵抗性である。この抗癌治療に対する抵抗性は、それぞれのRARα融合タンパクに関して、転写抑制因子SMRT/ヒストン脱アセチル化酵素複合体との結合がレチノイン酸依存性かどうかにより説明可能であった。また、われわれはゲノム中のエストロゲン受容体の結合部位を同定しその近傍を探すことにより、PMLと同じRINGフィンガーファミリーに属するEFPを含むいくつかの応答遺伝子を見出している。このEFP遺伝子の発現を抑制することにより、エストロゲン応答性のがん細胞の増殖を抑制できることを発見した。これらエストロゲン受容体応答遺伝子とがんの関連についても最近の結果を述べたい。