ABSTRACT W10-3(W10)
TGF-βのシグナル伝達因子Smadによる転写調節機構:川畑正博, 井上博文, 今村健志, 花井順一, 宮園浩平(癌研・研・生化)
Transcriptional regulation by Smads, signal transducers of TGF-β:Masahiro KAWABATA, Hirofumi INOUE, Takeshi IMAMURA, Jun-ichi HANAI, and Kohei Miyazono (Cancer Institute, Dept. of Biochemistry)
TGF-βは強力な細胞増殖抑制作用を有し、その負の増殖調節機構からの逸脱が癌化の原因のひとつとして考えられている。最近になり、TGF-βの細胞内シグナルはSmadと総称される一群の蛋白により伝達されることが明らかとなってきた。このなかでSmad4/DPC4は膵癌において高頻度に異常のみられる染色体18q21に存在する癌抑制遺伝子として同定された。TGF-βのシグナルはSmad2、Smad3、およびSmad4により伝達される。Smad2とSmad3は構造および機能が類似しており、TGF-βレセプターにより直接リン酸化を受け活性化される。Smad2/3はついでSmad4と複合体を形成し、細胞質から核内へと移行する。核では、さらに他のDNA結合蛋白とともにDNAに結合し、TGF-βの標的遺伝子の発現を調節する。われわれはSmad2とSmad3がTGF-β刺激に応じて結合することを見い出した。また、Smad6/7はTGF-βレセプターに結合してレセプターによるSmad2/3のリン酸化を阻害し、その結果、TGF-βのシグナル伝達を抑制することを報告した。Smadの機能を明らかにすることはTGF-βの細胞増殖調節機構を分子レベルで解明するうえで重要であり、本報告では、特にSmadによる転写調節機構に関するわれわれの最近の知見を発表する。