ABSTRACT W12-2(W12)
酸化的DNA損傷:葛西宏(産業医大)
Oxidative DNA damage: Hiroshi KASAI (Inst. Indust. Ecolog. Sci., Univ. Occup. Environ. Hlth.)
活性酸素は様々な要因により発生し8ーヒドロキシグアニン(8-OH-Gua) 等の酸化的DNA損傷を引き起こし変異誘発、発癌に密接に関わっていると思われる。当研究室では、新しい損傷の検索、変異誘発、修復に関する研究、生体内酸化ストレスのマーカーとしての分析等を行っている。
DNAの前駆体の酸化損傷(dNTP) の変異誘発能に関して新規評価法による解析を試みた。酸化的損傷ヌクレオチドである8-OH-dGTP, 2-OH-dATP, 5-OH-dCTP, 5-formyl-dUTPを調製、精製した後、大腸菌へと導入し lacI(-) 変異を調べた。8-OH-dGTP, 2-OH-dATPはそれぞれAT →CG およびGC→TAトランスバージョンを特異的に誘発した。点変異率は2-OH-dATP > 5-OH-dCTP > 8-OH-dGTP > 5-formyl-dUTP の順であった。本方法では、dNTPを大腸菌、菌体内に直接導入するので、ヌクレオチドプールの浄化に関わるmutT 型酵素活性の強弱も含めて評価可能である。
8-OH-Gua は酸化的DNA損傷のマーカーとして現在最も広く分析されている。市販キットを用いたDNA抽出により分析精度が高まった。ディーゼル微粒子のラット気管内注入により肺における8-OH-Guaは上昇し修復活性は低下した。またラット臓器DNA中の8-OH-Gua量は自発運動群に比べ強制運動群では増加した。ヒト試料については、喫煙により白血球および肺中心部DNA中の 8-OH-Gua 量が増加すること、肺癌患者では肺末梢部DNA中8-OH-Guaレベルが高いこと等がわかったが、個人個人のリスク評価のためには血液、尿に関し更に正確かつ迅速に分析する必要がある。