ABSTRACT W12-6(W12)
LOH (Loss of Heterogeneity) の分子機構ー出芽酵母をモデルとした解析ー:真木寿治1、梅津桂子1, 2、平岡美奈1、森昌明1、渡辺圭一1(1奈良先端大・バイオサイエンス、2JST さきがけ21)
Molecular mechanisms of LOH (Loss of Heterogeneity) in yeast cells: Hisaji MAKI1, Keiko UMEZU1, 2, Mina HIRAOKA1, Masaaki MORI1, Keiichi WATANABE1 (1 Grad. Schl. Biol. Sci., NAIST, 2 JST PRESTO)
がん抑制遺伝子の機能が細胞から完全に失われるには、突然変異に加えてヘテロ接合性の喪失(Loss Of Heterogeneity、LOH)が重要な役割を果たしている。しかしながら、その重要性にも関わらず、LOHの分子機構やその制御についての実験的アプローチは少ない。そこで、体細胞分裂中の出芽酵母二倍体細胞での片方の染色体にのみ存在する遺伝マーカーの喪失をLOHのモデルとして取り上げ、LOHに伴う染色体変化について分子レベルでの解析を進めた。その結果、以下の事項が明らかになった。(1) URA3 マーカーを片方の第III染色体右腕中央に導入した系での解析の結果、URA3 マーカーの喪失すなわちLOHの頻度はURA3の点突然変異頻度よりも100倍以上高いことが判明した。(2) LOHの原因としては、同一染色体内での欠失よりも、染色体の喪失や相同染色分体間などでの交叉に起因すると考えられる染色体再編が大部分を占めていた。(3) 第V染色体でのLOHの頻度は第III染色体の場合とほぼ同じレベルであったが、第V染色体では染色体の喪失あるいは染色体欠失によるLOHの割合は顕著に小さかった。(4) 第III染色体の大きな変化を伴う再編例の内、同一染色体内の欠失は約30%を占め、その約半数はMATaとHMR座に存在する繰り返し配列間の組換えによる欠失であった。(5) 相同染色体間の不等交叉によるものや他の染色体との組換えに起因する欠失が検出された。染色体の接合領域にはtRNA遺伝子やLTR等が数個存在しており、これらの配列間での組換えの関与が示唆される。以上の結果から、出芽酵母でのLOHには、染色体の喪失に加えて、相同配列や繰り返し配列を介した相同染色体間および異種の染色体間での組換えが大きく寄与しており、特に相同染色体間の相互作用に起因するものは第III染色体で約35%、第V染色体では約96%を占めることが明らかになった。