第49回日本腎臓学会西部学術大会


登録番号:10009
演題番号:SY2-6
発表日:2019/10/18
時刻:09:00〜11:00
会場:第2会場
発表セッション記号:05
発表セッション名:シンポジウム2 「小児-成人移行期医療」
発表セッションサブタイトル:
座長名:岩野 正之、藤枝 幹也
座長所属:福井大学 腎臓病態内科学・検査医学、高知大学医学部 小児思春期医学講座

腎臓内科領域の移行期医療の現状

吉矢 邦彦1

1原泌尿器科病院腎臓内科

(目的)小児の腎疾患患者では、小児医療から成人医療へ移行が必要となる例が増加している。しかしスムーズに移行できない例が存在し、小児側を中心に移行期医療に対する提言・ガイドが整備されている。一方、成人側からの問題提起は少ないため成人科の現状を調査した。(方法、対象)腎臓外来受診もしくは透析を受けた1569例、年齢59.7歳に20歳未満の小児期腎疾患を聞き取りした。(結果)1569例のうち小児期腎疾患歴のある症例は146例(9.3%)であった。146例の初診時年齢は38.0歳であり、小児期腎疾患発症は10.2歳であった。疾患内訳は、糸球体疾患が117例、先天性腎尿路異常が24例、後天性腎尿路異常が5例であった。最終観察時に透析例と腎移植例を除いたCKD93例の初診時データは、Cr1.19 、eGFR 66.44 、尿蛋白定性0. 88プラス、尿潜血0.93プラスであった。146例中成人期に腎疾患が移行した症例は110例、小児期に治癒もしくは治療終了した症例は36例であった。移行例110例の中で、小児施設から紹介状のあった症例は73例、紹介状のない症例が37例であった。紹介状のあった例は26.2歳で紹介され、データは、Cr1.36、eGFR67.71であった。保護者同伴で受診した症例が73例中40例あり13例は患者自ら病状を語れず保護者が経過を説明し対応に苦慮した。但し、同様の症例は経年的に減少していた。紹介状のない37例は47.7歳で受診し、Cr1.21 、eGFR 60.38であった。(考察)成人CKD患者の9.3%に小児期に腎疾患の既往があった。小児期腎疾患の75%が成人期に移行していた。移行した症例で小児側より紹介状のあった症例は66%、紹介状のない症例が34%であった。小児側は患者の自立を促すことも含め適切な支援が不可欠であり、移行期医療支援の提言・ガイドは徐々に浸透していると思われた。成人側は治療法の違い、先天性腎尿路異常、医療費制度の違いを理解することが課題でありガイドの有効な活用が望まれる。