第63回日本腎臓学会学術総会


登録番号:10117
演題番号:W5-1
発表日:2020/08/20
時刻:14:00〜16:00
会場:第12会場(ノース 4階 G403+G404)
発表セッション記号:31
発表セッション名:ワークショップ5 よく分からないCKD/DKD栄養指導実践:Pros and Cons
発表セッションサブタイトル:
座長名:鈴木 芳樹、菅野 義彦
座長所属:新潟大学保健管理センター、東京医科大学腎臓内科学分野

オーバービュー

菅野 義彦1

1東京医科大学腎臓内科学分野

腎疾患に対する食事療法といえば低たんぱく質、高エネルギー食ではあるが、かつてはネフローゼや急性腎炎といった疾患別に設定されていた時期もあった。これらの治療食は次第に姿を消しつつあるが、腎臓病の管理における食事療法は依然として重要な位置を占める。しかし100年以上の歴史を持つ慢性腎臓病に対する食事療法が過渡期にある。これは食事療法の評価が変わったわけではなく、対象となる患者層の変化によるものである。2002年に慢性腎臓病の概念が提唱されて以来、高血圧性腎硬化症、糖尿病性腎症も合わせて管理することが一般的になった。その臨床的な影響としては高齢患者が増加したことであるため、これまで腎臓病に対する食事療法として一般的に行われてきたたんぱく質制限に対しても見直すべき時期が来ている。すなわち若年者を対象としてきたたんぱく質制限を同じように高齢者に行った場合にサルコペニア・フレイルを増悪させる可能性がある。この問題について日本栄養療法協議会において日本腎臓学会、日本透析医学会、日本糖尿病学会、日本老年医学会、日本病態栄養学会の5学会からワーキンググループが構成され、サルコペニア・フレイルを合併した慢性腎臓病に対する食事療法についての指針が発表された。同じ系統の生活習慣病である高血圧や糖尿病、高脂血症の食事療法と慢性腎臓病の食事療法は両立が可能であったが、近年問題となっているサルコペニア・フレイルについては両立が難しいと言わざるを得ない。この問題への対策は1)食事療法を正確に行うために、可能な限り管理栄養士が介入する、2)対象者を選択し、同じ患者であっても状況により優先順位を変更する、という二点となる。