第63回日本腎臓学会学術総会


登録番号:50012
演題番号:S8-2
発表日:2020/08/19
時刻:15:00〜17:00
会場:第10会場(ノース 3階 G301+G302)
発表セッション記号:10
発表セッション名:シンポジウム8 慢性腎臓病と心不全/左室肥大、心筋障害
発表セッションサブタイトル:
座長名:常喜 信彦、中川 直樹
座長所属:東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科、旭川医科大学内科学講座循環・呼吸・神経病態内科学分野

心容量負荷の観点から慢性腎臓病患者の体液管理を考える

猪又 孝元1

1北里大学北里研究所病院循環器内科

慢性腎臓病は、心不全患者において強力な予後悪化因子である。最も留意すべき臨床病型は、うっ血である。退院時うっ血が少しでも残存すると、再入院率があがる。徹底したうっ血解除という利益は、一定範囲内なら腎機能障害という不利益を凌駕する。また、腎うっ血を解除し、ときに腎機能に有利に働く場合もある。低心拍出の露見を恐れるがあまり、うっ血解除が甘くならぬように留意すべきである。この際に重要なのは、うっ血の残存を正確に把握する診断力であり、特異的かつ簡便な血管内うっ血指標として頸静脈怒張が有用である。体液量過多がみられた場合、利尿薬は必須である。なかでもループ利尿薬は、強力な利尿作用を持ち、第一選択である。ただし、様々な弊害をもたらすため、「必要な分だけ」投与する。フロセミド耐性例へは、バゾプレシン拮抗薬トルバプタンを試みる。高度腎機能障害例でも利尿が図られることがあり、他の利尿薬よりは低血圧に左右されにくい。血管内の体液量を保持しつつ、血管外の体液処理ができる点がユニークな点である。慢性腎臓病を合併し、Na排泄型利尿薬での体液量コントロールがままならず、繰り返し入院を来している例がよい適応である。トルバプタンでも有効なうっ血解除が図れなければ、血液濾過や透析の導入を考える。