古地 順子1
1日本赤十字看護大学大学院
本研究は、意思表示が困難な患者と看護師との相互行為の過程を記述し、そこに見られる理解の現象を明らかにすることを目的とする。研究方法は相互行為における理解の現象をとらえるため、研究者が看護活動に参加し、そこでの出来事の意味を理解し記述する方法とした。研究参加者は意思表示が困難な患者1 6名とその看護にあたる看護師5名とし、いずれも研究参加の承諾を得た。データの解釈はGadamerの理解概念に基づいた。Gadamerによれば、人間は「先入見」の「地平」の中に生きている。患者と看護師の相互行為の過程は、患者と看護師が即座に「合意」に達するか、あるいは「対話」により看護師が自己の「先入見」を変容させることにより、効果的な看護行為を導いていることが示された。看護行為は、患者と看護師相互のなかに生じる理解によって決定づけられている。看護師は常に自己の「先入見」を自覚し、吟味することによって、看護専門職の真の価値を問われる「患者を理解する」ことへと導くことができる。より効果的な看護行為を導くには、自己と他者があらかじめ別のものであるという自覚と、自己の見解を一時中断する備えを有することが必要である。 |