日本赤十字看護学会誌オンラインジャーナル


年度:2010
巻 :10
号 :2
頁 :19〜26

終末期にある老年患者を看取るに至った家族の葛藤

坂口 千鶴1

1北里大学 看護学部

本研究の目的は、終末期にある老年患者を看取った家族がどのような葛藤を経験し、その経験をどのように受け止めているのかを明らかにすることである。研究方法は、疾患や老化により1年以上前に患者と死別した家族3名を対象に、ナラテイヴ研究方法を用いて面接、分析を行った。その結果、先の見通しがつかない中で家族は適切なケアや患者の意思に添うために、様々な退院指導を通して自宅での介護を覚悟するが、実際の自宅介護では身体的、精神的疲労や患者の症状悪化への不安により、その覚悟は揺らぐことになった。徐々に患者が衰弱していく中で、実際に最期の別れに恐怖や戸惑いを感じながらも覚悟をしていく家族の姿があった。看取り後、家族は自らの対応や意思の疎通等に後悔がある一方で、出来る限り患者の意思に添うことができた満足感もあることが明らかとなった。この過程では看取りの動機と現実との狭間で揺れる家族の姿があった。
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