日本赤十字看護学会誌オンラインジャーナル


年度:2013
巻 :13
号 :1
頁 :19〜28

認知症高齢者の生活世界に関する研究−行動観察による状態像の分析−

宮地 普子1、阿保 順子2

1旭川大学保健福祉学部、2長野県看護大学

 認知症専門病棟に入院中の認知症患者の状態像とその変化の記述から、彼らの生活世界を解釈することを目的に質的記述的研究を行った。対象は認知症専門病棟入院中の3名の認知症高齢者であり、調査期間は8ヶ月である。研究方法は、対象者の参加観察と日常生活における行動機能を評価した。得られた全てのデータから、状態像の変化の特徴を分析した。その結果、彼らの言葉の変化の過程に示唆を得た。まず、言葉の意味の喪失は具象から抽象へ向かっており、重度認知症の人々の会話の形に一致していた。認知が中等度から重度へと変化するに従い、言葉は意味内容の喪失の過程で象徴作用を経ると考えられた。また、言葉の象徴作用が失われ、語彙自体が喪失していく際に、ハミングという段階を経ると考えられた。また、関係づけから自己接触行動(他者から自己へ)へ変化し、交流の仕方が徐々に内閉的になり、最後に原初的行動(つまむ・こする)へ辿るプロセスが示唆された。
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