井本 寛子1
1日本赤十字看護大学大学院 看護学研究科博士後期課程
本研究の目的は,急性期病院における看護師の臨床的自律性を明らかにすることである.急性期一般病院に勤務する看護師4名に対して,半構成的面接により臨床的自律性を発揮して実践した場面について聴き取りを行い,得られたインタビューデータを実践の様相と文脈に焦点をあてて分析した.結果,研究参加者となった看護師の臨床的自律性は,通常の対応では難しいと感じられる場面における看護師の優れた実践の中に見出された.看護師は患者の本当のニードを察知し,患者の体験を共感的に理解することを通じて突き動かされるように自発性を発揮し,行動していた.看護師の自律的な行為には,個人として,そして周囲に働きかけることによって,チームとして環境を調整する,支援を得る,医師に治療方針を提言し,指示を先取りするなどがあり,これらを通じて最終的に困難な状況を打開し,患者のニードを満たしていた.また看護師が臨床的自律性を十分に発揮するには,困難な状況に取り組む中で見出された看護の方向性や実践を,看護チームが認め,積極的に取り組んでみようとする看護実践の文脈が影響していることが考えられた. |