日本赤十字看護学会誌オンラインジャーナル


年度:2006
巻 :6
号 :1
頁 :110〜118

終末期認知症高齢者への「緩和口腔ケア」導入の取り組み

渡部 貴美江1、中村 早苗1、原 等子2、佐伯 あゆみ2、寺門 とも子3

1今津赤十字病院、2日本赤十字九州国際看護大学、3唐津赤十字病院

終末期認知症高齢者の口腔内の現状には、口腔乾燥や歯周病などさまざまな苦痛要因が存在する。今回われわれは、認知障害のために意思表示のできない患者に対し、緩和ケアの視点を取り入れた「緩和口腔ケア」を提案し、病棟スタッフへの段階的教育を行い、ケア現場での導入を試みた。その過程を振り返ることで「緩和口腔ケア」の定着のために必要な点として、1.歯科専門家、看護、介護スタッフなどとのチームアプローチ。2.スタッフ間の目的の共有化と個別指導。3.患者および病棟スタッフの負担を考慮した用具や手法の検討の必要がわかった。また、「緩和口腔ケア」導入直後と6ヶ月後の病棟スタッフへの意識調査により、口腔ケアを口腔清掃・感染予防だけではなく、コミュニケーションやリハビリテーションの機会として捉え、また個々の患者の状態を観察して苦痛を緩和しようとする意見がみられた。今後も継続して「緩和口腔ケア」に取り組む必要性が認識された。また、終末期認知症高齢者に対するケアとして口腔機能向上や症状緩和に関する検討をさらに行っていく必要がある。
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