日本赤十字看護学会誌オンラインジャーナル


年度:2015
巻 :15
号 :1
頁 :31〜38

外来でホルモン療法を受けながら生活する進行前立腺がん患者の体験

吉原 祥子1

1昭和大学保健医療学部非常勤講師

 この研究は外来でホルモン療法を受ける進行期の前立腺がん患者が、どのように病状を理解しどのような資源を活用しながら病いと共に生きているのかを明らかにすることである。2名の参加者に参与観察と半構造化面接を用いて質的記述的研究を行った。分析の結果、Aさんは【兄の経過と照らし合わせ病状を理解する】【Y医師の力を借りながら出来る限り自分の力で病いと共に生きる】【寿命を覚悟し今出来ることに価値を置く】、Bさんは【仕事で得た情報収集能力を活用して病状を理解する】【情報と主治医の助言を得ながら病いと共に生きる】【延命よりも苦痛なく生活することを選択する】のテーマが抽出された。参加者たちは豊かな経験や背景を活用して病状を理解し、出来るだけ自分の力で病いと共に生きようと努め、死を明確に意識するからこそ限られた生に価値を置いた。看護師は、患者が自己の力で出来ている点は支持し、不足している点は情報提供することや調整することが必要であり、そのためには常に患者がどのように病状を理解し病いと共に生きているのかに関心を向けることが重要である。
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