ID:A00316-00041-10140 |
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091 2-O-K206-10:36
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神経難病患者のQOLに対する鍼治療の効果
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○千々和香織1,2,菊池友和1,2,山口智2,坂井文彦1,丸木雄一1 (1埼玉精神神経センター 神経内科,2埼玉医科大学 東洋医学科)
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【目的】我々は、日本神経治療学会等において、西洋医学的な治療で期待すべき効果の得られない患者が、更なる疼痛の軽減や難病の進行過程における症状緩和、QOLの向上を目的に鍼治療を受診していることを報告した。そこで今回我々は、神経難病患者の進行過程におけるQOLに対する鍼治療効果について検討した。 【方法】研究デザイン:オープンラベル前向き前後比較試験。研究施設:神経内科外来及び入院病棟。対象:2011年4月1日~2015年11月30日に鍼治療を受診した難病患者17名。男性7名、女性10名。平均年齢58.8±11.7(mean ±S.D.)。基礎疾患は筋萎縮性側索硬化症(ALS)8名、多系統萎縮症5名、パーキンソン病3名、脊髄小脳変性症1名。評価は鍼治療前と鍼治療4週間後の鍼治療前のSF36を比較した。 【結果】鍼治療前と比較し、身体機能19.0→26.5、日常役割機能(身体)18.7→24.5、体の痛み37.7→43.6、日常役割機能(精神)22.5→32.5、心の健康40.0→47.0に優位に上昇した(p<0.05)。 【考察】当院は、神経難病に対する特殊疾患療養病棟が設置され、ALSに対する治験を実施するなど、神経難病患者が多く受診している。進行過程の神経難病患者は、疾病受容ができず治りたいという願いと共に、進行する中で生じる身体症状に対する苦痛を抱えている。鍼治療を行い筋の過緊張状態や筋・筋膜、関節などの痛みが軽減し、患者の身体的苦痛が軽減することで精神的な苦痛も軽減されたことが推察される。また専門職の介入により疾病の理解や心身の状態を患者自身が把握できるようになり、冷静な判断や今後の治療、他者と接することに対して前向きになれると考えられた。 【結語】西洋医学的な治療で期待すべき効果の得られない神経難病患者に対し鍼治療を行った結果、QOLは有意に改善した。神経難病の進行過程において鍼灸師の介入は有用であると考えられた。 |
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