ID:A01794-00012-11132 |
|
|
隠された力を引き出したい!
|
○下田和枝1,藤原身江子1,谷口直子1 (1弘潤会 介護老人保健施設 シルバーケア野崎)
|
【目的】 当施設では、平成16年より「認知症の人の為のセンター方式」(以下センター方式と略)推進モデル事業に参加。その後も継続し取り組んでいる。今回、寝たきり状態でコミュニケーションも困難であったケースに対し、センター方式を活用した取り組みにより、心身機能の両面に向上が見られた事例を報告する。 【方法】 1)期間:平成17年11月~平成18年4月。2)センター方式を活用しながらケースを支援した経過及び本人・家族・職員の変化を分析。 【事例紹介】 T氏 83歳 女性 要介護度5 〈BR〉 障害老人自立度 C2 認知症自立度4 疾患名:多発性脳梗塞 脳血管性認知症 パーキンソン病 平成17年3月 当施設入所 センター方式活用前の状況:1.食事、入浴、排泄、整容、移動、移乗動作等全介助。2.身体の傾きがみられ、ティルト式車椅子を使用。3.声かけに対する反応・自発語はなく表情は堅い。4.介助の度に「職員の手をつねる」「叩く」「噛み付く」行為がある。5.食事の際は口に入れた物を「職員の顔に吐きつける」「スプーンを噛んだまま離さない」といった状態。 【シートで得られた情報と対応】 1.料理 花作り 裁縫が得意であったとの事で、声かけの際にこれらの話題を取り入れ、関連する施設内の活動にはできるだけ近くで雰囲気を味わって頂く。2.元来、社交的ではなかったとの事で、種々の活動への誘導の際には無理強いをしないようにする。3.夫に対して介護への抵抗はない為、職員の側もそのことを踏まえ、本人にもう少し心を開いてもらえるような対応を心がける。それまで出来ないと決め付けてなおざりにする対応から、少しでも可能なことを見つけてみようとする意識で取り組む見直しを行なった。 【取り組み開始後の経過】 ・平成17年12月末頃より1.次第に笑顔が増え、自発語が聞かれるようになる。2.標準型車椅子の座位が1時間以上保持可能となる。3.介護への抵抗が徐々に消失。 ・平成18年2月より1.活動への反応も向上し、体操の時に自ら身体を動かすようになる。2.レク活動や食事の際に肘掛椅子を使用し、1時間以上保持可能となる。自らスプーンを持って食べようとする姿がみられるようになり、整容動作も一部介助となる。3.介護への抵抗は消失。 ・平成18年4月上旬には、PT監視下でベッド端座位が10分程度保持可能となる。 取り組み後:介護度5 障害老人自立度 C2 認知症自立度 3a へと変化がみられた。 【考察】 得られた情報を共通認識として職員が根気強く声かけを行った結果、予想以上に短期間での変化が表れた。共に喜ぶことによりさらに良い関係が築け、相乗効果が表れたものと思われる。座位の耐性や動的なバランスが向上してきていることにより、今後もADLの改善が望めるのではないかと期待している。 【まとめ】 「より深く知る」こと「否定的にとらえず肯定的な糸口を見つける」ことの必要性について実践を通して感じた。知らなかった。知ろうとしていなかったことを「知る」ことの大切さや喜びを感じ、一人でも多くの利用者の『その人らしさ』に出会えるよう、今後も活用と努力を継続したい。 |
ご要望はこちらの問い合わせフォームにご入力ください。