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第18回全国介護老人保健施設愛知大会

11A-2-01

施設内看取りと地域に求められる老健像

○三輪誠

1介護老人保健施設 ユニケア岡部)

<目的>世の中は「高齢者多死時代」に突入し、死に場所づくりが課題であるという。さらに療養病床と老健施設の死亡退所率の差を問題にし、「今後は療養病床転換老健に看取りをお願いする」という。あまりにも露骨な死に場所づくりである。「死の前の生のあり方」を論ぜずして死亡退所率だけが論じられることは老健に携わる者として納得がいかない。大事なことは「どこで死んでもらうか」ではなくて、「どこで生きてもらうか」であり、課題は「生きていたなじみの環境のなかでの穏やかな死」が実現しにくい現状であり、今必要なことは現在の老健施設の看取りに対する認識の深化である。 当施設は在宅医療を実践している診療所立の老健であるが、入院施設を持たない単独型だからこそ見えるものがある。施設内看取りを分析することにより、病院併設型老健には見えにくいもの、地域住民が老健に期待するものを考察する。そして「正しいケア、なじみの関係の中で、悪くなっても病院に送らないで看取って欲しい」と思っているご家族が多いことを広く訴えたい。<方法> 平成15年9月1日(施設開所日)より平成19年5月31日までの45ヶ月に施設内で看取った72人につき、病名、医療処置、在宅医療との関係、末期医療内容などにつき分析した。<結果>1) 長期入所者退所総数267人   居宅108人 死亡(長期)66人 死亡(短期)6人   病院60人  特養19人  老健12人     ケアハウス1人  グループホーム1人2) 全看取り数:72人(男31人・女41人)(平均年齢86.3才)   死亡退所率24.7%(長期入所死亡者÷長期入所退所者)3) 施設内看取り72人中自医院患者52人・往診者33人・訪問看護者27人・   通所サービス者16人4) 面会簿記入者年間2万人(一日平均55人)5) 死亡原因病名老衰20人・悪性腫瘍12人・脳血管障害17人慢性心不全8人・呼吸不全6人・パーキンソン病6人   高度認知症19人・急死6人・その他2人6) 医療処置胃ろう9人・経管栄養7人・腸ろう1人・酸素療法6人インシュリン2人・気管切開1人<考察>1) 死亡者のほとんどは総合病院入院歴がある。何回も入院した人は施設での看取りを希望する。病院へ送った方も病状が安定すれば再入所になることが多い。老健、特養への退所は経済的理由である。2) 看取り数は他老健施設に比しかなり多い。  男女比が近い理由は全室個室で男性入所者が多いため。  短期入所中の死亡がある理由は在宅医療の重症者を受け入れているため。3) 在宅医療サービスを利用して長期入所になり、そのまま看取りになる例が多い。なじみの関係が基礎にある。一方、自医院患者でなくても看取りになるケースも20人存在し、施設への信頼がうかがえる。4) 面会者が多い理由は母体診療所の診療圏に施設があり、施設と家族がなじみの関係にあること、町の中心に施設があり来訪しやすいこと、田舎で血縁者が多く親戚一同の面会があること。地域密着型施設と言える。5) 悪性腫瘍患者の看取りが多い理由は、在宅医療と結びついているために、在宅療養者が入所を希望すれば断らないからである。認知症に悪性腫瘍が合併した場合、認知症が強くて入院が継続できない、治療法がないと知っている、病院の治療を望まない、老健でのケアを望む、などがある。 癌以外でも高度認知症の末期は施設内看取りを希望する例が多い。キュア(治療)よりもケアを望むようだ。病院が認知症者の入院を好まないことを家族が知っているケースも多い。老衰の定義ははっきりしないが、認知症や心不全があり長い経過でゆっくりと弱っていった例である。点滴しながらの看取りになりやすい。6) 医療処置が多い理由は重症者を預かるからである。<結語>看取りを分析すると2つのグループにわかれる。1つは95才前後の老衰者であり、もう1つは病院に何回も入院したり、病気が大きくて治療不可能とされている方々である。共通点はもちろん、家族が入院を希望しないことである。老健は地元の方々の利用料により運営されている。地域住民は地元の老健を利用して「住み慣れた土地で生き続けたい」と思っている。いうなれば相思相愛である。施設が看取りを拒否し病院に送ったとして、患者さんにどんな運命が待ち受けているかを想像し、キュア(治療)よりケアがふさわしい方ならば施設で看取るべきではないだろうか。「もう入院したくない、このままお親切なスタッフにお世話になりたい」「はい、わかりました。私たちも最善を尽くします」これが地域が求める施設像ではないだろうか。

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