ID:A01794-00014-10437
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第19回全国介護老人保健施設大会 京都

29-C1-4-6

通所リハにおける個別リハプログラム

○並河俊弘

1介護老人保健施設 松原徳洲苑)

【1.目的】松原徳洲苑(以下当苑と略す)の通所リハビリテーション(以下通所リハと略す)は3単位60人で、マシントレーニングを中心とした「レッツ」と名づけた機能訓練中心の3~4時間型と、個別リハに入浴やレクも行う一般的な4~6時間型および6~8時間型の3つのタイプを準備して利用者のニーズに合わせてリハビリを実施している。当苑の特徴は「個別リハ」を重視し、個々の身体状況や障害程度に合わせて治療プログラムを工夫している。いわゆる「回復期」にある利用者も増えてきており、介護保険下でもその人のニーズに応じた十分なリハビリが受けられるように努力している。今回は通所リハで行っている個別リハの内容を紹介するとともに症例を提示してその効果を検証した。【2.方法】当苑通所リハにて個別リハを受けている52名の利用者に対する個別リハプログラムを調査し、使用している治療技術の統計をとってみた。また、もっとも効果的であると思われる治療技術についてその内容と根拠を紹介し、症例を通して効果を検討してみた。【3.結果】平成20年5月現在において当苑で個別リハビリを受けている利用者は男性27人、女性25人合計52人である。年齢は57才から92才までで平均78.6才。介護度別でみると要介護3の利用者が最も多く14名で平均介護度は2.5であった。主な疾患としては脳血管疾患が最多で23名。次いで骨折後が12名、変形性関節症が9名、パーキンソン病などの神経疾患が4名、慢性閉塞性肺疾患や生活不活発病を含むその他の疾患が12名である。これらの利用者に対して使用している治療技術は大きく分類して10種類であった。最も頻度の高いものは歩行や立ち上がりなどの基本動作訓練であり38名に行っている。次いで筋力増強運動、関節可動域運動、ストレッチ運動を25名に実施している(重複有り)。トイレ動作などの応用的動作訓練、全身調整運動はそれぞれ5名に行っていた。神経筋再教育を実施していたのは2名であった。それらと組み合わせる形で関節運動学的アプローチ博田法(以下AKA-Hと略す)および関節神経学的治療(以下ANTと略す)を15名に実施している。AKA-H は博田により「関節運動学(arthrokinematics)に基づき、関節神経学(articular neurology)を考慮して、関節の遊び、関節面の滑り、回転、回旋などの関節包内運動の異常を治療する方法、および関節面の運動を誘導する方法である。」と定義されている運動療法の中の治療手技の一つである。AKA-Hを用いることで伝統的な運動療法では不十分であった関節包内運動を考慮した治療が可能となった。AKA-Hを単独で用いることはまれでほとんどは他の運動療法技術と組み合わせたり、基本動作訓練や応用動作訓練と併用することで能力障害の改善を図っている。またANTは「体幹または四肢の関節を圧迫または牽引することにより、四肢および体幹の運動機能を改善する方法である。伝統的運動療法、AKA-H、動作訓練と組み合わせて用いる。(博田、2002)」と定義されている。関節神経学的治療法の臨床的意義としては、伝統的運動療法およびAKA-Hの不足を補うことができ、伸張運動や神経筋再教育で筋収縮の誘発と増強、協調性訓練、脱力の治療に応用される。また、AKA-Hの副作用として時として見られることがある神経疾患、関節疾患におけるAKA-H後の脱力を回復させる効果がある。【4.症例紹介】症例1. 60才代男性 要介護4。診断名:左視床出血 障害名:発症後12ヶ月経過した左不全片麻痺、右上下肢感覚障害、観念運動失行、身体失認、歩行障害:歩行時に右下肢の膝折れがみられる。この利用者に対する治療プログラムとして、1.AKA-H 2.ANT 3.歩行練習を実施した。歩行時の膝折れは観念運動失行および身体失認により「患側の立脚期に適切なタイミングで大腿四頭筋を収縮させることができない。」と判断し、まずAKA-Hを行い関節機能異常、関節包内運動を改善し、関節受容器の反応を正常化した後に、C7/T1およびL1/2椎間関節の関節圧迫を行い下肢伸側の筋収縮の増強を図った。その後骨盤介助にて歩行訓練を実施したところ、十分な筋収縮が得られ膝折れを起こすことなく通所リハフロア内を歩行することが可能となった。症例2. 80才代女性 要介護1。 診断名:左股関節全置換術後 障害名:術後16ヶ月経過した左大腿部痛および歩行時の不安定感。この利用者に対しても1.AKA-H 2.ANT 3.歩行練習を実施した。左大腿部痛は仙腸関節機能異常からくる関連痛を疑いAKA-Hで軽減を図り、脱力の改善と筋収縮の増強を目的にC7/T1およびL1/2椎間関節の関節圧迫を行った。その後抵抗構成運動-骨運動介助を行って歩行訓練を実施した。股関節の不安定感は減少し、歩行時に力が入りやすくなったとの効果がみられた。【5.考察】関節可動域運動や伸張運動、筋力増強運動、持久力運動、協調性訓練などの伝統的な運動療法では伸張時の痛みや運動器系の異常状態に対しては無効である場合が多く、また過用、誤用の可能性もあり臨床的に効果が上がりにくかった。しかし、AKA-HやANTを応用することでADLの改善を図ることができるようになってきた。今回は強調しなかったが、高齢者にはその特性から高次脳機能障害を合併する例も多いため、それらの特徴に応じた訓練方法を選択することも重要であると言える。【6.まとめ】今回介護老人保健施設の通所リハにおける個別リハの実際を紹介した。発症から時間が経過した利用者の中でも治療可能な機能障害が存在する。関節機能異常を治療し、高次脳機能障害の特徴を考慮した訓練を実施することで能力障害を改善できる可能性があると考える。

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