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第23回全国介護老人保健施設大会 美ら沖縄

安楽姿勢を求めた車椅子シーティングを試みた事例

○さこ畑泰弘

1老人保健施設 恵友ライフケアセンター)

安楽姿勢を求めた車椅子シーティングを試みた1事例介護老人保健施設 恵友ライフケアセンター さこ畑泰弘 小橋信行 田中教朗 西岡賢二 加納雅裕 長井三奈 土岐昌史 【はじめに】 パーキンソン病を基礎疾患とし、臥床時以外の時間は屈曲姿勢で過ごすことを余儀なくされている1事例(A様)に対し、車椅子上で適切なシーティングを行うことで、屈曲姿勢から開放された時間を創出できるのではないか、また様々な不快感や体調不良から開放され、会話や食事といった日常の生活行為をより自然な形で行えるようになるのではないかと考えた。今回はA様のニードや症状また御家族様の意向を確認しながら、SMARTシステムを基本コンセプトに手作りでシーティングユニットを作成し、車椅子上姿勢(経時的変化含む)や通所リハビリ利用中の過ごし方の変化を評価した。【事例紹介・方法】1)80歳、女性、2世帯住宅にて5人暮らし2)パーキンソン病(Hoehn and Yahrの分類 Stage3~4)3)介護度4、通所リハビリ・ショートステイ・福祉用具貸与の利用パーキンソン病薬服用によるオン・オフ時間及びウェアリングオフ現象がみられ、日内変動がある。抗重力肢位での体幹伸展保持が行えず常に屈曲姿勢である。それに加え、眼瞼下垂により開眼が困難なため転倒経験も多い。居宅では入浴介助のみ直接介護に当たり、その他の生活行為は準備や助言など見守り介護を基本としている。通所リハビリ利用中は、入浴以外の大半の時間を車椅子上で過ごされ、車いす駆動は全介助である。臥床することはほとんどなく時間経過に伴って車椅子上で極端な屈曲姿勢となっていることが多く、自身での姿勢修正(体幹伸展保持)が困難である。通所リハ仲間と顔を合わせての会話や食事に難渋する場面が多数みられた。また同姿勢のみが原因かは定かではないが、発熱や便秘、食欲不振の訴えが多かった。これらを踏まえ、この症例に対し車椅子上で出来るだけ自然な形で安楽姿勢をとって頂けるよう車椅子シーティングユニット(背クッション、座クッション、アームレスト)を作成した。手作り製品ではあるが、対象者やその家族が満足できうる品質(耐久性・安全性・信頼性など)を保とうと試みた。 【結果】A様と共に座り心地や身体反応を確認しながら作成した車椅子シーティングによって体幹伸展が自身で行えるようになり、安楽であるとの感想を得た。座位での体幹伸展の保持時間が延長した結果、デイケアで他の利用者様との会話量の増加が見られ、食事の姿勢が改善され便通も以前よりも改善された。【まとめ】体幹伸展の座位を保つためには、基本的に抗重力筋の活動が必要である。長時間の座位による抗重力筋の疲労や障害による不十分な筋活動などの状態では、他の手段で座位の安定性を保つことになる。抗重力筋活動以外の座位安定化手段としては、抗重力筋以外の筋による代償的筋活動、靱帯の張力、関節の張力と応力、骨性支持などの身体の内在力を利用する方法と、外部からの支え(外力)を利用する方法がある。今回の症例では、日常生活での屈曲姿勢による単一的な動作によって筋短縮が存在し胸郭可動域制限、股関節伸展・外転・外旋制限、骨盤後傾位が見られ、体幹腹圧の弱化やそれによる四肢の可動困難感がある。また、長年の屈曲姿勢により筋・筋膜・靱帯などの軟部組織が脆弱し、腰椎連結の不安定性を引き起こしていることも考えられる。これらの機能障害に対してリハビリプログラムを実施し、自動での体幹伸展運動が可能であったり、四肢の動かしやすさが増したりと効果があった。しかし、短時的なものであり持続性が課題であった。そこで、外部からの支えを利用する方法、すなわち車椅子シーティングを作成することにした。身体や症状に合わせた、また時間経過も考慮した車椅子シーティングを試みると、ユーザーの座り心地や身体反応の確認等、共にこまめに確かめる作業が必要であったため手作りでの作成を選択した。素材の選別(硬度性・防水性・手触り感)などに配慮することで、手作り品としては耐久性・安全性・信頼性に優れ、また経済的に安価で作成でき何回も修正が効くという利点を感じている。今後の課題としては、車椅子シーティングを試行し一年あまり経過した現在、徐々に身体機能・症状が変化し、A様の車椅子シーティング上での体幹伸展保持時間の短縮が見られている。体幹伸展保持の支持機能であるバックレストや座面の角度・上腕受け(アームレスト)がうまく活用しにくくなっており、機能障害に対するリハビリプログラムの再考や車椅子シーティングの修正の必要性を感じている。 今回の症例では、本人様のニードの掘り下げにより、姿勢の改善のみを目的としたのでなく、他者との自然な関係(雰囲気)作りといった質の向上を望んでいることを知った。デイケアでの過ごし方、ひいては家庭生活でも車椅子シーティングによってコミュニケーションの増加など精神的に安らぐ時間・空間ができればよいと考えている。理学療法士として、姿勢の機能障害に対して維持向上のため真摯に向き合っていく必要があるが、同時に精神的な「質の向上」への配慮や対応していく能力を持っていかなければならないと感じている。今後、デイケアでの業務の中で、利用者様の「心の声」を敏感に察知しようという意識を持ち、本人様・ご家族のニードを把握していきたいと感じている。

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